今の世の中、あっちを見ても、こっちを見ても、AI(人工知能)にガツンとぶち当たります。
と言うのはちょっと言い過ぎですが、しかし近い将来、確実にそのような環境になるでしょう。
AIは、我々の生活を便利にしてくれる大きなポテンシャルを持っています。
そうであれば、AIが日常に浸透すればするほど、人間にとってはメリットとなりそうですが……。
果たして、本当にAIの進化は、人間にとっていい事ずくめなのか。
この点、そうではないと思わざるをえない事実が色々と存在するのです。
〈originally posted on April 2, 2023〉
1 AIでラクラク論文作成
大学において生徒の成績を付けるのに重要なものといえば、やはりレポートや論文。
普段から講義をしっかり聴いた上で、様々な文献に目を通しておかなければ、論文は書けません。
しかし、AIを使って論文を容易く書くことができれば、そんな労力は不要となります。
学生たちを適正に評定せねばならない教授にとっては悪夢のような話ですが、すでにこのようなチート行為は現実化しているのです。
ピーター・スネプヴァンガースという大学院生は、気候変動について2000ワードの論文を書くために、ChatGPTというAIを使用しました。
彼はまず、気候変動に関してChatGPTにいくつか質問。
それに対し、返ってきた答えは、全部で365ワード。
2000ワードには少なすぎます。
そこで彼は、このテーマに関連する質問を10個に増やして再試行。
すると、3500ワードの答えが返ってきました。
ピーターは、それを元にしてたった20分程度で論文を作成。
その際、AIが作成した文章をそっくりそのままコピペしたのだとか。
ほとんどAIの力を借りて提出した論文の評価は、「優秀」ではないものの、一応「合格」でした。
高評価を得ようと思えば、AIに任せっきりというのは得策ではないですが、合格すればそれでよいという学生にとって、AIは強力な味方と言えます。
それは見方を変えれば、採点する側の教授にとっては、チート行為を見抜かねばならないということ。
そして何と、AIによって書かれた文章か否かを見極めるAIのソフトも既に開発されているのだとか。
AIによるチートをAIが暴く。
人間は蚊帳の外といった感じです。
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2 アドルフ・ヒトラーとチャット
今から数ヶ月前、AIを使った「ヒストリカル・フィギュア」というチャット・アプリが物議を醸しました。
このアプリは、約2万人もの歴史上の人物とチャットを楽しめるのです。
それら歴史上の人物には、あのアドルフ・ヒトラーやハインリヒ・ヒムラーも含まれていました。
しかもこれらの人物は、会話の内容によっては、ナチス・ドイツにおける自らの責任を否定するような発言もします。
これが大きな問題となることは言うまでも無いでしょう。
戦争犯罪人が、自分の罪を否定するわけですから。
AIを使えば、既に存在しない人物と会話も出来てしまいますが、こういった「副作用」もあるわけです。
犯罪史に名を残すような極悪犯罪者と会話が出来るアプリなどが登場すれば、同様の倫理的な問題が起きるのは間違いありません。
3 AIでオレオレ詐欺
現在、日本では強盗事件が多発しており、「安全な国」というのが徐々に神話になりつつあります。
その一方で、昔ながらのオレオレ詐欺も健在。
そして、オレオレ詐欺が横行しているのは日本だけでありません。
海外でも増加傾向にあります。
さらに、最近ではAIを使ったオレオレ詐欺も現れ始めているというから驚き。
米国テキサス州ヒューストンに住む夫婦、フレッドとキャシーの二人は、今月、息子を名乗る人物からの電話を受けました。
電話の内容は、その息子が車で事故を起こし、妊婦に重傷を負わせてしまったため、自分が刑務所行きになるというもの。
そこで、保釈金として1万5千ドルを早急に用意してほしいと頼んできたのです。
日本でも十分ありそうな話ですね。
ここまでは普通のオレオレ詐欺ですが、明らかに普通とは異なる点があります。
それは、犯人がAIを使って息子の声をそっくり真似ていたこと。
このため、その夫婦は、電話の主が自分たちの息子であることになんの疑問も抱かなかったとか。
専門家によれば、FacebookやInstagram、TikTokなどの個人情報を利用すれば、誰でも比較的カンタンにAIで他人の声を真似ることが出来るそうです。
結局、フレッドとキャシーは、要求された金額のうち、5000ドルを支払った時点で詐欺であることに気づきました。
今後、AIを利用したオレオレ詐欺が増加する可能性を考えると、被害を防ぐのは困難になりそうです。
4 AIでターゲットを抹殺
AIを使って人を殺害する。
一昔前であれば、SF映画の中でしかありえない話ですが、これはすでに現実のものとなってきています。
イランで核兵器開発の中心だった人物にモーセン・ファクリザデという科学者がいます。
そして、イランの核開発に対して危機感を持っていたのが、イスラエル。
イスラエルとしては、何とかしてファクリザデを亡き者にしたかったのです。
そしてたどり着いたのが、AI。
2020年11月27日、ファクリザデは、車で自宅へ帰る途中、銃殺されました。
この時、彼の命を奪ったのは、一台のピックアップトラックに積まれた銃。
そのトラックが接近し、銃が狙撃したのです。
イラン政府の報告によると、この銃は完全にAIによって動かされ、人間が一切操作することなく、正確にファクリザデに弾丸を命中させたのだとか。
その証拠に、ファクリザデからわずか数センチ離れた位置の妻は全くの無傷でした。
この主張に対し、イスラエル側は肯定も否定もしていません。
よって真実は明らかではないですが、アメリカなど他の多くの国は、AIによるものと見ているようです。
このケースではトラックが使用されましたが、ドローンとAIを組み合わせれば、より凶悪な計画を実行出来そうな気がします。
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5 AIの進歩により消えていく職業
AIの進化が我々にもたらす脅威として最も恐ろしいのは、特定の職業が消えていく、或いは縮小していくことでしょう。
AIは人間より遥かに優秀で、なおかつ、いくらでも働かせ続けられます。
AIが人間にとって代わるのは、ごく自然な流れです。
では、一体どんな職業が危ないのか。
ここからは、「AIに仕事を奪われそうな職業4選」をご紹介します。
1 弁護士
訴訟を起こすのは、多くの人にとって、ややハードルの高い決断が必要です。
訴訟手続は高度な専門性が要求されますから、普通は弁護士に依頼することになるでしょう。
しかし、そのための費用は決して安くはありません。
費用を巡って弁護士と争いが生じる可能性もあります。
そんな庶民の悩みを一挙に解決しようとしたのが、スタンフォード大学卒のコンピュータ・サイエンティストであるヨシュア・ブラウダー氏。
彼は、2015年にAIを使ったチャットアプリを開発しました。
このアプリは、言わば「弁護士アプリ」。
アプリからの質問にユーザーが答えていくことで、法律的な問題点を整理し、取るべき最適な行動を割り出してくれるのです。
今年の2月、実際にこのアプリを使用した裁判が行われました。
AIの弁護士が参加した世界初の裁判です。
法廷では、原告側、被告側のやり取りをアプリが聴いて、次に何を発言すべきなのかを適格にアドバイス。
これにより、弁護士がいなくても目的を達成できるというわけ。
こういうケースは、今後ますます増えるかもしれません。
もちろん、どれだけAIの技術が進んでも、あらゆる裁判においてAIの弁護士で事足りるということにはならないでしょう。
しかし、TVのCMでおなじみの過払い金返還請求訴訟などは、将来的にはAI弁護士でも十分対処が可能となるように思います。
過払い金が数十万円であれば、少額訴訟という手段もありますし、そんな場合にAI弁護士アプリがあれば強い味方となるのは間違いありません。
2 スーパーモデル
ドイツにある「カラーデジタル」という会社は、AIを使って広告用のスーパーモデルを作成しています。
見た目には本物の人間としか思えないほどリアルなモデルを、AI技術を駆使してコンピュータ上で生み出すのです。
これを利用すれば、企業が理想とするモデルを自在に作ることが可能。
しかも、人間のモデルにありがちなスキャンダルとも無縁です。
AIが生み出した「デジタルモデル」であれば、ファッションモデルが麻薬所持で逮捕されるようなことも起きません。
イメージを大事にする企業にとっては大きなメリットでしょう。
3 ミュージシャン
膨大な知識・データが重要となる分野では、AIが強いのは容易に想像できます。
では、芸術などの創造的な分野ではどうか。
残念なことに、こういった分野でも人間の立場はAIに脅かされつつあります。
その脅威を肌で感じているのが、元ジェネシスのメンバーで、数々のヒット曲を持つシンガーであるピーター・ゲイブリエル氏。
彼は、あるインタビューで、近い将来、ミュージシャンの仕事の多くがAIに奪われることになると語っています。
また、今後、ミュージシャンはAIの技術を拒絶するのではなく、むしろAIと協働することが重要なのだとか。
AIが作詞・作曲し、それをAIが歌った曲が大ヒット。
そんな時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。
4 学校教師
アメリカのプリンストン大学が、AIの進歩によって消える可能性の最も高い職業トップ20を発表しました。
それによると、映えある(?)一位に輝いたのは、コールセンターのオペレーターです。
これに関しては、特に驚くに値しないでしょう。
先日、富山県高岡市で、新型コロナワクチンのコールセンター従業員の信じがたい実態が明るみに出ました。
電話が少ないのをいいことに、一日中寝ていたり、YouTubeを見たり、ゲームをしたりするスタッフがあちこちにいたとか。
まさに税金の無駄遣い。
こんな人達に給料を払うくらいなら、AIに任せる方がはるかにマシです。
顧客からの質問内容をデータベース化しておけば、予想される質問に対してAIが回答を与えるのはそれほど難しくありません。
実際、多くの企業では、既にAIを使ったチャットボットを活用しています。
驚くべきは、2位以下の職業。
なんと、トップ20の中で最も多くランクインしているのが、「教師」なのです。
具体的には、歴史、地理、宗教学、社会学、英語(外国語)、法律などの教師。
近い将来、様々な分野の教師がAIによって駆逐されるかもしれません。
AIを使って大学の論文をあっという間に書き上げられる時代ですから、AIが教師の代わりを務めるのは、十分可能でしょう。
考えてみれば、AI教師には実に多くのメリットがあります。
まず、人間の教師と違って、誤った知識を生徒に教える可能性は極端に低くなります。
人間の場合、例えば英語の授業において、実際の英語、生の英語とは程遠い「学校英語」を教える教師はいくらでもいますから。
また、成績を付ける際にも、先入観や偏見による不平等な評価をすることもありません。
完全にフェアな判断が期待できます。
さらに、生徒に暴言を吐いたり、暴力を振るったりすることも皆無。
教師による体罰やセクハラが問題となることも無いでしょう。
こうして見ると、AI教師にはメリットが多く、デメリットを探すのが難しいくらいです。
AI教師は、特にこの日本において重要な役割を果たします。
昨年、小中学校の不登校生徒が過去最高の24万人を突破したことを考えれば、自宅にいながらAI教師に教わる環境は非常に理想的。
一方、教員のブラックすぎる労働環境は一向に改善されず、教員不足が深刻化してきています。
こういった危機的な日本の教育現場を救うのは、AI以外には無いでしょう。