意外なほどに辛いことが待っているドライバー職をご紹介します。
日本では、若い世代を中心に「免許離れ」が進んでいると言われています。
仕事上どうしても必要という人でなければ、交通機関の発達している日本では、車が無くても特に問題ないという場合が多いでしょう。
何より、交通事故の加害者になってしまうリスクが減らせるというメリットが大きいかもしれません。
さらに、自分が安全運転していても「あおり運転」の被害に遭う、といった理不尽なトラブルも避けられます。
一方、移動手段として車がほぼ必須とも思えるアメリカでも、近年は全ての世代で免許取得者の数が減ってきています。
免許を取らない人は特に10代で増加傾向にあり、ほとんどの州で免許が取得できる16歳になっても、4人に1人しか免許を持っていません(2014年の統計)。
車を運転しない20代~30代のアメリカ人は、免許を取らない理由として、(1)忙しくて取るヒマが無い、(2)車の維持費が高すぎる、(3)他の交通手段がある、などを挙げています。
しかし、免許を取る人が減少しつつあるアメリカだからこそ、ドライバー職はますます重要性を増しているのです。
〈originally posted on September 6,2018〉
1 スクールバス
アメリカやカナダなどでは、学校に通う生徒たちの送迎用にスクールバスが利用されています。
特に、アメリカのスクールバスは、法規上の義務から車体が黄色一色で、独特の形状をしており、かなり目立ちます。
スクールバスのドライバーは、基本的には生徒を安全に学校や家に送るだけです。
教師に比べればよっぽど楽ではないかと思ってしまいそうですが、そう甘くはありません。
例えば、ドライバーが女性で、生徒たちが高校生の場合、言葉によるセクハラが頻発します。
高校生によるセクハラは、会社などにおけるセクハラよりも数段タチが悪く、えげつない言葉を浴びせてきます。
学生によるそういった迷惑行為に対して、ドライバーは報告書を作成し、問題の学生に一定期間スクールバスを利用させないことも(一応は)可能。
ただし、実際にそれをやると、激怒した母親が文句を言いに来て、結局その学生はお咎め無しになることがほとんど。
また、言葉によるセクハラよりも厄介なのが、バス内における暴力。
小学生の場合は、ドライバーの髪の毛を引っ張るなど、まだ耐えられるレベルですが、相手が高校生ともなるとそうはいきません。
時には、ふざけていきなり殴りかかってくる学生もいるとか。
その場合はさすがに、起きたことをきっちりと学校側に報告すべきように思えますが、それすらも非常に大きなリスクを伴うのです。
仮に、暴力を振るった学生が退学処分を受けた場合、その子は別の学区へ転校することになります。
では、その学生を送迎するのは誰なのかというと、報告をした当のドライバーになる可能性があるのです。
実際、あるバスドライバーは、退学になった一人の学生を送迎するためだけに、毎日4時間も余分な時間を費やす羽目になったとか。
暴力があまりに酷い場合は、警察が呼ばれることも珍しくありません。
また、全てのスクールバスに当てはまるわけではないでしょうが、運が悪いとドライバーは、バスの中がカオスと化している状況で運転を続けねばなりません。
小学生であれば、窓から身を乗り出して、通行人に罵声を浴びせるなど当たり前。
ドライバーに目掛けて物を投げ、後頭部に直撃すると大盛り上がり。
中高生になると、恋人どうしで毛布を被ってイチャイチャし始めることも。
最悪なのは、稀にマリファナを吸い始める高校生がいること。
ある女性バスドライバーは、女子生徒の一人が、
と叫んでいるのを運転中に耳にしました。
「デブ」が自分のことを指しているのは明らかでしたが、無視して運転していると、何やら妙な匂いが……。
その直後、目の前がぼやけて見えるようになり、危険を感じてすぐにバスを停め、警察に通報。
しかし、結局誰一人として逮捕されることは無かったのです。
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2 タクシードライバー
が、タクシードライバーに暴言を吐くなどして絡んでくることが多いのは、日本もアメリカも同じ。
ただ、明らかにアメリカでしか見られないような困った客もいます。
そのような客の代表例は、「複数の所にプレゼントを届ける」という理由から、いくつかの場所でタクシーを降りるタイプです。
もちろん、クリスマスというわけではありません。
そしておそらく、偶然同じ誕生日の知り合いが何人もいるというわけでもないでしょう。
そういう客は、タクシーを降りて「プレゼント」を手渡した後に戻って来ると、車内で金の勘定を始めます。
誰かにプレゼントを渡して大金を受け取るようなタイプの人間は、一つに絞られます。
ドラッグの密売人です。
彼らは取引きの現場に向かうのに、よくタクシーを利用します。
さらに、車内で堂々とドラッグ密売についての会話をすることも。
彼らは、タクシードライバーが警察に通報することなどありえないと考えているのです。
それはあながち間違ってはいません。
何故なら、タクシードライバーにとって、通報したところで自分の身を危険にさらすだけであり、何の得にもならないからです。
タクシードライバーは自分の意思とは無関係に、日常的に犯罪に加担させられていると言えるかもしれません。
3 グーグルマップ・ドライバー
グーグルマップのストリートビューは、病的な方向音痴の僕にとっては大変ありがたい存在です。
そんなストリートビューを可能にしているのが、グーグルマップ専用の車。
道路を走行しながら周りの景色を自動的に写真に収めていきます。
グーグルでは、この車のドライバーをたまに募集しているのですが、大都市で募集することはあまり無く、しかも、「ストリートビューのための車のドライバー」ということも募集要項に書かれていないのが普通。
募集していること自体がまれなのに、グーグルマップ関連の仕事であることも分からないので、大抵の人は、応募して面接を受けたときに初めてグーグルマップのためのドライバーだと知るのです。
車に客を乗せることも無く、ただ運転していればそれでいいという点を考えると、随分ラクな仕事のようにも思えますが、やはりそれなりの苦労はあります。
通行人を問答無用で写真に撮っていくグーグルマップの車を歓迎しない人も多く、特に海外では、この車を見つけるなり車に向かって中指を立てる人も。
A地点からB地点へ向かう途中で、中指を立てる人が数人であれば、写真にボカシを入れることで対処できますが、その人数があまりに多いと、同じルートを後からもう一度回らねばならないことに。
中指だけならまだいいですが、自分たちのプライバシーが侵害されると感じている人の場合、車に近づいてきて直接文句を言うこともあります。
では、いくつかの困難を乗り越えて、次第にこの仕事に慣れていき、割当てられたエリアを走破するとどうなるのか。
終わりです。
え、次のエリアは?
こっちはやる気満々ですよ。
早く次のエリアを割当ててくださいよ!
この仕事に就いた人の誰もがそう思うでしょうが、何とこの仕事、最初に割当てられたエリアを走りきってしまうと、そこで仕事終了です。
もし、別のエリアでもグーグルマップのドライバーとして働きたいのであれば、そのエリアで改めて応募せねばなりません(募集していれば、の話ですが)。
よって、グーグルマップのドライバーに採用されたことにテンションが上がって、それまでの仕事を辞めてしまうと悲惨なことになります。
つまり、グーグルマップのドライバーは、ほとんどの人にとって、人生で一回しか経験できない仕事なのです。
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4 遺体の運び屋
誰かが死亡したとき、検死などの目的のため、その遺体を死体安置所まで車で運ぶ人たちがいます。
それが、遺体の運び屋です。
人が亡くなった現場に電話一本で駆けつけ、遺体を車に載せて目的地まで移動。
やることはそれだけです。
車の運転以外に、特にスキルは必要ありません。
この仕事に応募した際に、面接で質問されるのはたいてい次の二つだけ。
・免許は持っているか。
・遺体を扱うのに抵抗は無いか。
どちらの質問に対しても「はい」と答えれば即採用。
タクシードライバーと異なり、厄介な客に出会うこともありません。
ただし、仕事の依頼はいつ来るか分からず、また、どれくらいの件数かも日によってまちまち。
場合によっては、小休止を挟みながら15時間近く運転しっぱなしということもあります。
この仕事の基本的な流れとしては、まず会社から電話があり、指定された場所に急行し、ストレッチャーで遺体を建物から運び出してから、それを車に載せて目的地まで搬送すれば完了。
これらの作業を行う上で、最も注意が必要なのは、真冬で道路に雪が積もっているときです。
ストレッチャーを押している最中に雪道で足を滑らせ、体勢を崩して思わず両手を離した瞬間に、ストレッチャーだけが滑走していく、などということが起こりかねません。
ちなみに、遺体は寝袋のような袋に入っているので、運び屋が故人の姿をモロに見ることは無いのですが、強烈な死臭は袋を通り抜けて鼻腔を直撃します。
さらに、時には適切に保存されていない状態のものを運ばねばならないことも。
ある運び屋の男性は、大雪のためにやむなく数日遅れて病院に取りに行ったところ、病院側から衝撃の事実を聞かされました。
亡くなったのは殺人事件の被害者で、まる4日間、院内のクローゼットの中にそのまま放置していたとのこと。
彼の話によれば、その時たまたま空腹だったから良かったものの、胃袋に何か入っていたら、全て吐き出してしまうほどの激臭が漂っていたとか。
また、怖いのは臭いだけではありません。
肺の中に溜まった二酸化炭素が体外に自然と放出されるとき、まるで唸り声のような音が鳴ることがあるのです。
まだ生きているのではないかと錯覚するほど生々しい状態の人を運ぶのは、単純な力仕事の次元をはるかに超えています。
そして驚くことに、運ぶ対象が本当にまだ生きている場合もあるのです。
病院で生命維持装置につながれている患者が、もう余命いくばくも無く、息を引き取るのがほぼ確実という段階になったら、前倒しで運び屋が呼ばれることがあります。
その場合、病院に到着した運び屋は、ロビーでコーヒーでも啜りながら、自分が会ったこともない患者が最期の時を迎えるのを気長に待つことになるのです。
病院を訪れた他の人から話しかけられ、世間話の途中で「お仕事は何をなさっているんですか」などと質問されたら最悪。
と正直に答えるべきか、ウソを言うべきかは明らかでしょう。
病院で待つのはまだマシな方で、ごく稀に、殺人事件の被害者を安置所に運んだら、まだ息をしていた、ということもあるそうです。
これは、被害者が亡くなるのが時間の問題であると判断された結果、早々に運び屋が呼ばれるのが原因。
なかなかに過酷なこの仕事、給料は悪くないらしいのですが、普通の人は数週間ほどで辞めてしまうと言われています。