大きなプロジェクトを立ち上げる際、ネット上のサイト等を使って支持者から資金を集める手法が、クラウドファンディングです。
本の出版や映像制作、ゲームの開発など、様々な目的で利用されています。
資金を提供した支援者(バッカー)には、その提供額に応じて見返りが用意されているのが普通。
クラウドファンディングを有効に活用すれば、資金面で妥協することなくプロジェクトを実現できます。
ただし、これは基本的に誰でも利用できますから、ときどき妙な目的で行われることもあるのです。
〈originally posted on October 4,2019〉
1 デート資金が無い悲しい男
イングランド在住のトム・パッカーという男性は、今から数年前、26歳のときにクラウドファンディングを始めました。
その目的は、13回分のデート代を集めるため。
バーテンダーの仕事と執筆活動で生計を立てている彼は、運命の人を見つけるべく、色んな女性とデートしまくろうと考えたのです。
目標金額は、デート一回分が100ポンドで、合計1300ポンド(約17万円)。
ちなみに支援者は、10ポンドを提供すると、ただの一般人であるトムのサイン入り写真がもらえて、100ポンドだとトムとデートをする権利、500ポンドだとデートに加えてトムから愛のポエムをゲットできます。
結局、集まったお金は227ポンド(約3万円)。
たった数回のデートで、果たして彼は真実の愛を発見できたのか。
そもそも、デート代をクラウドファンディングで集めようとする男に惹かれる女性はいたのか。
それはさておき、このどーでもいいクラウドファンディングに対し、フィル・ステュアートという男性が激怒。
「トムのデートをぶち壊す」ためのクラウドファンディングを始めました。
デート妨害の方法は、トムがデートをしているのを見つけたら、その後ろをアコーディオンを弾きながらついて回るというもの。
この地味な嫌がらせ作戦のために、99ポンド(約13000円)が集まりました。
いつどこでデートをするのかも分からない男のために、アコーディオンを抱えてスタンバっておくには安すぎる資金です。
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2 名作文学を絵文字で翻訳
日本で誕生した絵文字は、今や世界中で使用され、数年前にはアメリカでフルCGによるアニメ映画も制作されました。
絵文字のキャラクターたちが山ほど登場する作品ですが、残念ながら世界レベルで「クソ映画」認定されています。
この絵文字を使って、とんでもないプロジェクトを立ち上げた人がいます。
フレッド・ベネンソンという男性が、米文学の古典的名著である、ハーマン・メルヴィルの『白鯨』をすべて絵文字だけで翻訳しようとしたのです。
彼はこのプロジェクトのためにクラウドファンディングを利用し、それにより集まった金額は約3600ドル(約38万円)。
その後、6438文から成る『白鯨』はすべて絵文字に翻訳されました。
現在、その本は一冊40ドルから購入できます。
このプロジェクトの背景には、絵文字の可能性を知りたいというベネンソン氏の思いがあったようです。
それにしても、これだけの大作を絵文字だけで理解できるものなのでしょうか……。
3 ゾンビ化を防止する石けん
この先の人生に何の不安も無いという恵まれた人は、ゾンビが街を徘徊し始めるような事態に備え、ゾンビ対策をしてみるのもいいでしょう。
仮に日本にゾンビが出現するとしたら、それは佐賀県だけの問題ではありません。
では、ゾンビ対策として一体何を準備すればよいのか。
その答えの一つが、「抗ゾンビ石けん」です。
この石けんで体を洗えば、万が一ゾンビにがぶりとやられても安心。
自分がゾンビ化することを防げます。
2013年、ゾンビへの妄想をこじらせたノア・トンプソンというイギリス人男性が、この「抗ゾンビ石けん」を世界に広めるべくクラウドファンディングを始めました。
石けんの香りはぜんぶで4種類(ラベンダー・レモン・チョコレート・ペパーミント)。
普通に体を洗うには何の問題も無いのですが、本当にゾンビに効果があるのかという点については、ゾンビがいないので確かめようがありません。
ちなみに、最終的に集まった資金は319ポンド(約42000円)。
残念ながら、今のところ抗ゾンビ石けんの存在はほとんど知られていないようです。
4 洗剤が要らなくなる魔法のボール
2015年にアメリカで、とあるメーカーが、非常に怪しい商品のためにクラウドファンディングを開始しました。
その商品名は、「クリスタル・ウォッシュ」。
これは、毎日の洗濯に革命をもたらすグッズです。
見た目は手のひらサイズのプラスチック製ボールで、表面は水切りボウルのような形状。
ボール内部には、「バイオ・セラミック」という小さな粒が数十個入っています。
洗濯機を回すとき、洗濯槽にこのボールを入れておくことで、バイオ・セラミックが水のpH濃度を変化させ、それに伴い過酸化水素が発生。
その過酸化水素が洗濯物の汚れを落とし、除菌・脱臭もバッチリというわけ。
要するに、クリスタル・ウォッシュさえあれば、洗剤など不要。
……というのがメーカー側の説明なのですが、残念ながらこの商品にそこまでの効果はありません。
ちゃんと洗濯物の汚れを落とすには、普通に洗剤が必要になります。
しかも、「洗剤不要」を謳うこの手の胡散臭い商品は、今から数十年前にも既に登場していました。
そして今回、3700人以上のお馬鹿な支援者が現れたおかげで、このメーカーは268000ドル(約2800万円)を手にしたのです。
大昔に失敗に終わったアイデアをパクり、それを基にした「画期的」商品でクラウドファンディングをやれば、数千万円を集めるなど造作もないと言えそうです。
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5 普通のポテトサラダで590万円
クラウドファンディングは、本来は多額の資金を集めるために利用されます。
間違っても、ポテトサラダを作るためのものではありません。
しかし、それをやってしまったのが、米国オハイオ州コロンバス在住のザック・ブラウンという男性。
2014年、彼は、単にポテトサラダを作っているというだけでクラウドファンディングを始めました。
開始時の目標額は10ドル。
もちろん、これは一種の冗談でやったことです。
しかし、この悪ふざけに乗っかる人が次々と現れ、最終的に集まった金額は55000ドル(約590万円)。
一食分のポテトサラダを作っただけで590万円です。
真面目に働くのがアホらしくなる金額だと言えます。
支援者たちは、恐らくこれが冗談だと承知していたはずですから、べつに騙されたわけではありません。
よって、ブラウンはそのお金を全部自分の懐に入れてもよかったのですが、そうはしませんでした。
彼は、飢えに苦しむ人々へのチャリティの一環として資金を使ったのです。