安全対策がこんなに危ないのなら……。
安全対策などいらぬ!!!!!
何事にも安全対策を怠らないことは重要です。
ただし、その対策が、本当に安全性を高めているのかという点は、念のためにチェックしておく必要があります。
というのも、安全のために行われることの全てが安全に役立っているとは限らず、むしろ危険性を生んでいることもあるからです。
〈originally posted on August 29,2018〉
1 自動シートベルトの恐怖
2017年における運転手のシートベルト着用率は、日本では約99%。
諸外国を見てみると、アメリカやイギリス、カナダでは90~95%となっています。
しかし、80年代~90年代における着用率はこれよりずっと低く、例えば1983年のアメリカではわずか14%のドライバーしかシートベルトをしていませんでした。
そこで、シートベルトの着用率を上げるため、各自動車メーカーが知恵を絞って開発したのが、「自動シートベルト」です。
運転手が車に乗り込んでエンジンをかけようとすると、肩ベルトの上端がドア枠に沿って自動的に奥から手前に移動し、運転手の肩から腰にかけてを固定します。
〈自動シートベルト実演〉
ここまではいいのですが、この自動シートベルトには重大な欠点がありました。
腰ベルトに関しては自動ではなく、運転手が自ら装着せねばならないのです。
何だそんなことか、と思われたかもしれませんが、実はこれが致命的でした。
自動シートベルトによって肩ベルトが装着されていることに安心したドライバーが、腰ベルトを自分で付けるのを忘れた状態で衝突事故を起こすとどうなるか。
ぶつかった時に発生する力のほとんど全てが運転手の首にかかり、運が悪ければ肩ベルトによってギロチン一歩手前まで行ってしまいます。
自動シートベルトを搭載した車の人気が長続きしなかったのも当然と言えましょう。
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2 三振法で刑務所が満杯に
1994年にアメリカで成立した、いわゆる三振法(Three-strikes law)は、2018年現在で、28の州で施行されています。
この法律は、過去に二度犯罪を犯した者が、三度目の犯罪で有罪になると、必ず終身刑などの重い刑を宣告されるというもの。
どのような犯罪で適用されるのかについては州によって差があり、最も厳しいのはカリフォルニア州で、比較的軽い犯罪でもアウト。
2009年には、レオナルド・アンドレードという男がスーパーでビデオテープを盗もうとした結果、それが三度目の犯行だったため、仮釈放なしで懲役50年を言い渡されました。
何度も犯行を繰り返すような犯罪者は、長期間刑務所にぶちこんでおくことで、市民の安全が守られる。
そういう考えがこの法律の根底にはあるわけですが、ではその効果はどうなのかというと、これが正に議論の的となっているのです。
犯罪の抑止に一定の効果があったとする報告もあれば、ほとんど何も変わっていないとする報告も。
何も変わっていないのが真実だとすると、犯罪発生率はそのままで、刑務所に収監される受刑者の数だけが異常なほど膨れ上がっているということになります。
そうなると、少なくともカリフォルニア州の場合、軽い犯罪を犯した者が刑務所に占める割合がどんどん増えていき、刑務所の収容能力が限界に達するという事態になりかねません。
そのとき街に残っているのは、比較的軽い罪を犯す者より、強盗や殺人などを犯す凶悪犯の方かもしれません。
また、過去に二度犯罪を犯している者は、重犯罪を犯しやすい傾向があるとする見解もあります。
何故なら、罪の重さに関係なく、三度目の有罪が確定すると、重い刑に決まるからです。
どうせ厳罰を科せられるのなら、それに見合う罪を犯そうと考える者がいてもおかしくはありません。
3 ヘルメット着用で自転車に乗る危険性
ヘルメットを被ってママチャリをこいでいるおばさんを見る機会はほとんど無いですが、自転車通学している中学生がヘルメットを着用しているのは特に珍しくありません。
ここで問題となるのは、この場合、より安全なのはおばさんの方なのか、中学生の方なのかということ。
ヘルメットをしている中学生の方が安全、と言いたいところですが、そうとも限らないのです。
あるリサーチによると、車を運転中のドライバーは、前方を走る自転車を見ると、ヘルメット着用の有無で注意力に差が出ます。
ヘルメットをして自転車に乗っている人に対しては注意力が下がり、十分な距離をあけることを怠ってしまうのです。
これはおそらく、ヘルメットがあれば万が一事故が起きても重大な事態にはならないだろうという油断がドライバー側にあるから。
ヘルメットを被って自転車に乗る際は、そのことを意識しておく必要があります。
4 火に油を注ぐスプリンクラー
火災が発生したときの強い味方であるスプリンクラーが、時には火災を起こすことがあるというのは、にわかには信じがたいですが本当の話です。
真冬に火事が起きたとき、スプリンクラー内部の水が凍結していては何の意味もなしません。
その対策として、かつてはスプリンクラー内部の水に不凍剤が含まれていました。
不凍剤の量が適切であれば特に問題は無いのですが、量が多すぎたりすると、「可燃性」を帯びてしまいます。
床一面が炎と化しているところへ、天井から可燃性の液体が降りそそぐ。
正に死のスプリンクラーです。
2001年には、米国ニュージャージー州ハイランズにあるレストランで、店内のヒーターによって室内温度が高温になり、それによって誤作動したスプリンクラーが、店内を火の海にするという事故がありました。
これは、純粋にスプリンクラーだけが原因で火災を引き起こしたという珍しい例です。
もちろん、すでに火災が発生しているところにスプリンクラーが作動し、火の勢いを強めた例もあります。
こういう事故が続いたことから、2010年になって、新たに製造されるスプリンクラーに対する不凍剤の使用が禁止されました。
ただし、既存のスプリンクラーはそのままでも違法ではありません。
つまり、現在もかなり多くのレストランが、ある種の「バクダン」を抱えているということなのです。
5 消防士に向かって飛んでくるバンパー
ドライバーの安全のために、車には様々な工夫が施されていますが、その中で最も歴史の古い物の一つと言えるのが、バンパーでしょう。
1904年には、すでにバンパーを搭載した車が登場していました。
基本的にバンパーはただの金属かプラスチックの長いやつですから、これが何か危険を生むとは考えにくいかもしれません。
ところが、いくつかの条件が重なると非常に危険な物と化すのです。
ハイテクなどとは無縁と思えるバンパーの中には、衝撃を少しでも和らげるため、ガスやジェルの充填されたシリンダーが組み込まれていることがあります。
車が事故って火災が発生すると、シリンダーの内圧が上がって爆発を起こし、バンパーをふっ飛ばすのです。
これによって直接被害を受けるのは、事故現場で消火を行う消防士たち。
燃えている車に向かってホースを持って近づくと、いきなりショットガンを撃たれたかのようにバンパーが飛んできます。
この現象のことを把握していた消防士たちは、真正面から車に近づくと危険だと考え、斜め45度の角度で接近するようにしていました。
しかし、多くの場合、バンパーは消防士を狙うかのように、斜め45度の角度で飛んできたそうです。
6 肺ガンの危険度を上げる煙草フィルター
今では健康に悪いのが常識となったタバコも、かつては何の害も無いと信じられていました。
しかし、1951年に『リーダーズ・ダイジェスト』という雑誌で、タバコが癌の原因になりうるという内容の記事が掲載されたことで、状況は一変します。
各タバコメーカーがタバコのイメージ回復に躍起になる中、ロリラードというメーカーは新しいフィルターを採用したタバコを開発し、タバコの無害性をアピールしました。
そのタバコのブランド名は、『ケント』。
癌のリスクを心配することなくタバコを楽しむことが出来ると考えた愛煙家の間でケントは飛ぶように売れ、1952年からの4年間で総販売数は130億個を超えていました。
しかし、ケントで使われていたフィルターは、肺ガンを引き起こす原因となるアスベストを原材料にしていることが発覚。
皮肉なことに、癌にならないようにケントを吸っていた人々は、フィルター無しの普通のタバコを吸っていた人よりも、癌について遥かに大きなリスクを背負う羽目になっていたのです。
その後、ロリラード社は巨額の損害賠償請求訴訟を提起されています。
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7 何の意味も無いかもしれない性犯罪者登録制度
ご存知の方も多いでしょうが、アメリカでは性犯罪者の登録制度があります。
例えば、ある男が性犯罪を犯して懲役刑が確定し、その後、服役を終えて出所した場合、その男がどこに住んでどういう職業に就いているのかといった情報を誰でも入手出来るのです。
その情報を得るために、いちいち役所に行く必要などありません。
専用のスマホアプリで事足ります。
この制度のおかげで、自分の家の近所に、過去に性犯罪を犯した者がいるかどうかを、スマホで簡単にチェック出来るのです。
住民の安全にとって大きなメリットになりそうなシステムですが、実は、完全に逆効果であるという指摘も。
その理由は、一度でも性犯罪を犯した者は、この制度によって行き場を失い、さらなる犯罪へと追い込まれる可能性が高いからです。
例えば、マークという名の男性は、2009年に性犯罪で有罪が確定し、13ヶ月の懲役を言い渡されました。
その後、刑期を終えた彼は、自分が性犯罪者として登録されていることから、まともに就職するのは不可能であると考え、自ら会社を立ち上げたのです。
経営は軌道に乗り、彼は一応の成功を収めるのですが、2016年にそれが一気に崩れていきます。
彼の会社の大手取引先に対し何者かが匿名のメールを送り、マークが過去に性犯罪を犯した事実および性犯罪者登録簿の情報を知らせたのです。
これによって彼の会社は信頼を失い、倒産の危機に瀕する事態に。
それから少しずつ経営は回復しているものの、同様のことがまた起きるのではないかという不安から、彼は毎日気が気ではないのだとか。
ちなみに、この制度が性犯罪の抑止に効果的であるという確固たる根拠は今のところありません。
小さな子どもを狙うようなものも含め、性犯罪の多くは、性犯罪者名簿に登録済みの者によってなされるのではなく、被害者と近い場所に住む者によって行われる場合が圧倒的に多いのです。