ほとんどの人が、寝ているときに見ているとされる、夢。
ただ、朝起きたときに、夢の内容を記憶していないことが多いので、毎日夢の内容をハッキリと覚えているという人は少数派でしょう。
いずれにしても、どうせ夢を見るのなら、幸せな内容の方がいいに決まっています。
この点、僕自身は、悪い夢、後味の悪い夢である場合の方が圧倒的に多いのですが……。
ところで、我々は一体なぜ夢を見るのか。
これついてはまだ謎が多いのですが、最近の研究で明らかになりつつある「夢」の意外な側面をご紹介します。
〈originally posted on May 11,2015〉
1 怖い夢を見る理由
誰かに追いかけられたり、見たこともない相手と戦っていたり……。
日常ではあまり経験しないような、怖い夢を見たことのある人は少なくないでしょう。
人間がなぜ怖い夢を見るのかについては、興味深い仮説があります。
それは、自分の生命が危険にさらされたときの「対処法」を、寝ている間に予行演習しているのではないか、というもの。
フィンランド出身の科学者、アンティ・レヴォヌソ博士によれば、我々が眠っているとき、外敵に対して「戦う」か「逃げる」かを決定する脳の部位や、「走る」「殴る」といった運動に関連した部位などが極めて活発な状態になっているらしいのです。
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2 男女の夢の違い
様々な研究によって、夢の内容は男女間でかなり差があることが明らかになっています。
10万人を対象に行われたある研究では、男性は「車」「武器」「暴力」などを中心とした夢、女性は「職場」「家庭」などに焦点が当てられた夢を見る傾向が強いそうです。
また、性的な要素のある夢の場合、女性は現実に知っている異性が登場することが多いのに対し、男性の場合は「架空の」女性が登場する割合が高いのだとか。
これらの違いは、生まれながらの男女間の差や、環境的な要素が原因と見られています。
例えば、男性の身体に特徴的な物質である「テストステロン」は、攻撃的な思考や、夢の中での性的な行為に強く影響していると考えられています。
3 夢とデジャヴ
初めて来た場所なのに、以前にも来たことがあるような気がする、いわゆる「デジャヴ(既視感)」は、夢を見る過程とよく似ているのです。
「デジャヴ」は、人間の脳が、初めて見る光景を過去に見た光景と関連づけて理解するために起こるのですが、夢もまた、過去の記憶を使って構成されたものを見る現象なので、両者はある意味非常に似たものといえます。
例えば、夢の中に「家」が出てくる場合、その家は実際に自分が住んでいる家とは全く違うことが多いのですが、にも関わらずその場所を既に「知っている」ように感じてしまうのです。
一方、現実の世界で夢と同じ内容を体験する「予知夢」に関しては、50%以上の人が経験したことがあるとされていますが、研究者の間でも、予知夢のメカニズムは完全には解明されていません。
4 動物は夢を見るのか
陸上に生息する哺乳類と、鳥類のほとんどは夢を見ると言われています。
ペットの代表である犬やネコはもちろん、ネズミでさえ人間と同じように複雑な内容の夢を見るのだそうです。
マウスを使って行われたある実験では、実験用の「迷路」の中から脱出しようとするときの脳の活動パターンと同じようなパターンが、眠っている間にも見られたのだとか。
また、「キンセイチョウ」という鳥を使った実験では、眠っている最中に、「さえずり」をしているのと同様の脳神経の活動パターンが見られたという結果も出ています。
5 白黒の夢
盲目の人は別として、約12%の人が白黒の夢ばかり見ているとされています。
イギリスのダンディー大学の行った研究によれば、幼少期に見ていた「テレビのタイプ」がカラーの夢を見るか白黒の夢を見るかを決定するのだそうです。
現在55歳以上の人の多くは白黒テレビを見て育っているので、彼らは白黒の夢を見る可能性が高く、一方25歳以下の人のほとんどはカラーの夢を見るのだとか。
6 夢を読み取る機械
まだ初期段階ではあるものの、日本の研究者によって「夢の内容を読む」機械が研究されています。
多数の被験者に様々な写真を見せて脳の活動パターンを記録しておき、それを元にして、今度は人が眠っているときの脳の活動パターンから、逆にどんな映像を見ているのかを予測するわけです。
大雑把なカテゴリーについてしか予測できないとはいえ、現段階で、およそ60%の精度でどんな夢を見ているかが分かるのだとか。
例えば、夢の中で見ているものが「人」なのか「建物」なのかといったことは把握できるのです。
この技術が完成すれば、例えば昏睡状態に陥って意思疎通が出来ないような人の「心」を読むことが可能になると言われています。
7 夢遊病
夢遊病は、寝ている間に体が勝手に動き出し、時には自分や他人に傷害を負わせることもある厄介な症状ですが、中には殺人を犯してしまったケースもあります。
イギリス人のブライアン・トーマス氏は、寝ている最中、隣で寝ていた妻を絞め殺して逮捕されました。
夢の中で、トーマス氏は「侵入者」の首を絞めていると思い込んでいたようです。
結局、トーマス氏が夢遊病を患っていることが判明し、夢を見ているときに自分の行動を制御できる可能性は無かったとして、起訴は取り下げられました。
8 夢の中の音楽
ビートルズのメンバーだったポール・マッカートニーは、夢の中で聴いた曲を元に「イエスタデイ」という名曲を作ったとされています。
イタリアのフィレンツェ大学の研究では、ミュージシャンは、そうでない人よりも夢の中で音楽を聴く可能性が2倍も高いそうです。
また、早い時期に楽器を学んだ人ほどこの傾向が強いのだとか。
さらに、夢の中で聴いたとされる曲の半数以上は、その人にとって聴き覚えの無い曲だとされています。
9 チーズと夢
夜中にチーズを食べると悪夢を見るという都市伝説があるのですが、これはチーズに含まれるアミノ酸トリプトファンがストレスを軽減させ、睡眠を導入する働きを持つことから来たものです。
また、最近の研究によれば、チーズのタイプによって夢の内容に影響しうることが分かっています。
例えば、アオカビで熟成させる「スティルトン」というチーズだと、ぬいぐるみが喋ったりするような奇妙な夢、「レッドレスター」だと懐かしい夢、「チェダー」だと有名人が出てくる夢、といった具合です。
10 明晰夢
夢の中で、「これは夢だ」と気づいた上で、自分の行動や、夢の展開を制御できるのが「明晰夢」と呼ばれる夢です。
だれでもコツをつかめば、比較的簡単に明晰夢を見ることができると言われています。
また、普段からよくテレビゲームをやる人は、このタイプの夢を見やすいそうです。
これは、ゲームも夢も、人工的に作られた世界に身を置くからだとされています。
さらに、アスリートがこの明晰夢を上手く利用すれば、夢の中で練習することで、実際の運動能力も鍛えられるのだとか。
将来的には、本格的に明晰夢をメニューに取り入れるアスリートが出てくるのかも知れません。
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