親ガチャ
とはッ!
子供に代わって親がガチャを引いて、親子で仲良くスマホゲーに興じること。
……ではなく。
子供は親を選べないという事実を、ゲームのガチャに例えた表現です。
親の顔がかなりアレな感じだったり、親が暴力魔神だったり、親が子育てに1ミリも関心が無かったりしても、子供はどうしようもありません。
この世にオギャーーーッと生まれた瞬間、すでに「ガチャ」は引き終わっているのです。
その後の人生が如何に過酷なものであっても、もう手遅れ。
それが、「親ガチャ」なのですから……。
〈originally posted on October 13, 2021〉
1 キラキラネームの恐怖
親がまともな人物でない場合、まず子供が遭遇する試練は、自分の名前です。
いわゆるキラキラネームを付けられてしまった子供は、それだけで人生の難易度が上がります。
ここで、いくつか海外の例をご紹介しましょう。
まずは、1871年にイングランドのリーズで生まれた、フレンドレス・バクスター。
フレンドレス。
つまり、友達ゼロ。
彼の親が何故こんな名前を付けたのかは分かりませんが、フレンドレス君が、小学生時代、周りから事あるごとにイジられていたであろうことは、容易に想像できます。
一方、イジりたくても、簡単にはイジりにくいキラキラネームもあります。
それが、1882年にイギリスで生まれた、とある女性の名前。
アン・バーサ・セシリア・ダイアナ・エミリー・ファニー・ゲルトルート・ヒパティア・ラグ・ジェイン・ケイト・ルイーザ・モード・ノーラ・オフェリア・クインス・レベッカ・スターキー・テレサ・ユリシーズ・ヴィーナス・ウィニフレッド・ゼノフェン・イェティ・ゼウス・ペパー。
嘘のようですが、本当の名前です(ちなみに最後の「ペパー」が名字)。
学校のテストや入学試験などでは、自分の名前を記入するだけで相当な時間ロス。
自己紹介する際には、名前を言い切らないうちに、相手が「え、何が始まった?」と困惑することは間違いないでしょう。
実は、ペパーまでの単語の頭文字を並べると、26文字のアルファベットになっています。
続いては、ちょっと洒落にならないキラキラネーム。
それは、2005年に米国ペンシルベニア州で生まれた、「アドルフ・ヒトラー・キャンベル」です。
息子にアドルフ・ヒトラーと名付ける親の感覚は、全く理解できません。
名付け親である父親のイシドア・ヒース・キャンベルは、ナチス・ドイツを崇敬する団体を組織していたとか。
2016年、彼は、暴力事件を起こしたことで逮捕されています。
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2 親の虐待で両足を失った子
イギリスのロンドン南東部、ケント州に住むトニー・ハジェル君(6歳)は、生後わずか1ヶ月で、両親からの虐待を受け、病院に運ばれました。
怪我の状態はかなり酷く、命の危険もあったのですが、6週間に及ぶ治療の末、奇跡的に回復。
ただし、暴力が原因で敗血症を発症していたため、両足の切断を余儀なくされました。
その後、トニーは、養子に引き取られ、新しい両親のもとで暮らすことに。
そして、2年前には、トニーのために義足が用意され、彼は、4歳にして初めて自分で歩くことを体験したのです。
残忍な親のせいで一度は失いかけた人生を、取り戻したと言えるでしょう。
しかし、彼の脚の骨にはいくつか問題があり、両脚の長さも揃っていません。
実の両親は、児童虐待に対する最も重い法定刑である懲役10年を科されていますが、トニーの養親は、法改正を行って、殺人と同程度の刑を科すべきだと主張しています。
3 自分の名前を「バカ」だと信じていた女の子
自分の名前で苦しむのは、親からキラキラネームを付けられた場合だけではありません。
2016年8月、米国アーカンソー州で、4歳の女の子が警察に保護されました。
両親から、日常的に暴力を受けていたのです。
母親のジェニファー・デネン(当時30歳)と、その恋人のクラレンス・ディーンは、程なくして警察によって逮捕。
警察によると、その女の子は、保護されたときに、自分の名前を尋ねられると、
「バカ(idiot)」
と答えたとか。
クラレンスが、その子のことを本名の代わりに「バカ」と呼び続けていたので、その子は自分の名前が「バカ」なのだと信じていました。
親から名前を貰っていながら、その名前で呼ばれることすらないというのは、何とも悲しい話です。
4 子供に犬の糞を食べさせる母親
子供の給食費を払わない親は、児童虐待をしているのと同じ。
かつて、ある報道番組で、某アナウンサーがこう語っていました。
自分の子供の食事に対して金を使わないというのは、子供に食事を与えないのと同視してよいでしょうから、まさに児童虐待であると言えます。
そういう親も問題ですが、もっと危険なのが、子供にトンデモナイ物を食べさせる親。
2019年、米国オクラホマ州で、メアリー・エリザベス・ムーアという女が逮捕されました。
この女、信じがたいことに、自分の幼い二人の子供に、「食事」として犬の糞を与えていたのです。
警察の話によると、ここまで酷いネグレクトの例は見たことが無いとのこと。
厳罰に処すべき所業ですが、後の裁判で、ムーアには執行猶予付きの判決が下されており、この極悪な母親は、刑務所行きを免れました。
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5 自分を生んだという理由で親を訴えた男性
ここまで書いてきておいて何ですが、「親ガチャ」という表現には、どうにも違和感を覚えます。
子供は、如何なる意味においても、自発的に「ガチャを引く」わけではないからです。
ガチャを引く以前に、そもそも我々は、生まれてくるかどうかすら選択できません。
そんなことが出来るのは河童だけです。
では、この世に生まれるかどうかを決めるガチャがあるとすれば、それは一体何ガチャと呼ぶべきか。
どーでもいいことなので、とりあえず「河童ガチャ」としておきましょう。
この世に生を受けたということは、それは河童ガチャに当たったと言うべきか、外れたというべきか。
これは人によって違うでしょうが、ハズレだった場合、文句を言うべき相手は誰なのか。
素直に考えれば、それは親です。
この点、河童ガチャに外れたという理由で、自分の実の両親を訴えようとした男性がいます。
それが、インドのムンバイに住むラファエル・サミュエル氏。
2019年、当時27歳だったサミュエルは、自分が頼んだわけでもないのに勝手に自分を生んだという理由で、両親を相手取って訴訟を起こす計画を立てました。
生まれたくなんかなかったのに、何で生んだんだよ、というわけです。
これだけでもメチャクチャな感じですが、もっと狂っているのが、彼の両親は、どちらも弁護士であるというところ。
プロの弁護士二人を相手に、この訴訟を戦いぬくのは、かなり厳しいでしょう。
にも関わらず、彼は何故、訴訟を提起してまで、自分の存在を否定しようとするのか。
そのきっかけは、彼がまだ子供の頃、行きたくないのに学校に行かねばならない理由を両親に尋ねても、何も答えてくれなかったことだとか。
その時から彼は、次第に、自分の存在、ひいては人類の存在に対して強い疑念を抱くようになっていきました。
そして遂に、地球にとって人類は害悪でしかない、という結論に至ったのです。
こういう信念を持っていると、自分がこの世に生きていること自体が苦痛そのもの。
自分が幸せかどうかは関係ありません。
実際、サミュエルは、自分の人生は至って快適であると語っています。
ただ、自分はここに存在すべきではない、と。
普通の人にはちょっとついて行けない思考の持ち主ですが、彼もまた、「ガチャ」に外れた人であるのは間違いないでしょう。