一見すると画期的な商品なのに、一体なぜ失敗に終わったのか……。
食品であれば、味がイマイチだったりすれば当然売れないでしょうし、電化製品であれば、機能が悪ければ人気は出ません。
しかし、とりあえず問題は無さそうな商品であっても、時には会社が予想だにしなかった理由で失敗することもあります。
一方、それとは逆に、素人が考えてもすぐに分かりそうな重大な問題点を残したまま、何故かそのまま発売されてしまった商品もあります。
いずれにしても、一つだけ明らかなのは、消費者にとってお気に入りの商品が突然消えてしまうことは、予測不能な場合もあるということでしょう。
〈originally posted on June 2,2018〉
1 うるさすぎるポテチ
というのが、現代社会の重要なキーワードの一つであるのは否定できませんが、ただ、闇雲に環境に配慮するのも、それはそれでマズイかもしれません。
日本でも「ドリトス」などのスナックで知られるフリトレーは、本国アメリカにおいて「サン・チップス」という商品を約30年前から販売しています。
2009年、フリトレーは、環境に配慮した新しい「サン・チップス」を誕生させました。
と言っても、中身のチップス自体は以前と全く同じ。
違うのは袋の方です。
それまでのビニール製ではなく、生物分解が可能な袋に変えたのです。
土壌中で分解されるわけですから、この上なくエコ・フレンドリー。
ただし、この袋には一つ「大きすぎる」問題がありました。
袋に独特のゴワゴワ感があるため、手で軽くつかんだだけで約100デシベルの騒音が発生します。
「100デシベル」というと、至近距離のブルドーザーよりもうるさく、ジェットエンジンよりはマシというくらいの騒音です。
〈映画館の中に持ち込むと危険です〉
これに対し、消費者の不満が爆発。
フェイスブックにおいて、「悪いけどサン・チップス袋のせいで何言ってるか聞こえない」という名前のページが立ち上げられると、そのフォロワーは44000人まで増えました。
それを受けて、フリトレー側は、1種類の商品を除いて全てのサン・チップスの袋を従来のビニール製のものに戻したのです。
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2 ソニーの黒歴史(ベータマックス)
どこの企業にも、いわゆる「黒歴史」というものは存在します。
斬新なアイデアが詰め込まれた商品であるにも関わらず、残念ながら消費者の共感を得られずに失敗に終わったという、会社としては抹消してしまいたい過去。
ソニーといえど例外ではありません。
今の時代、テレビ番組を録画するのはブルーレイやハードディスクが当たり前ですが、かつてはビデオテープが使用されていました。
そのビデオ規格の覇権を争うこととなったのが、ソニーとJVCケンウッド。
1975年、ソニーは「ベータマックス(Betamax)」というビデオテープを開発し、それをビデオの標準規格にしようとします。
しかし、その一方でJVCが「VHS(Video Home System)」という全く別の規格に基づくビデオテープで対抗。
両者に互換性は全くありません。
これはつまり、ビデオデッキを製造するメーカーは、どちらの規格が勝ち馬なのかを予想せねばならなかったということです。
再生時の映像や音声のクオリティは、ベータマックスの方がかなり上まわっていました。
そうであれば、勝者はベータマックスになりそうですが、結果はその逆だったのです。
なぜソニーは負けたのか。
実は、長時間録画が可能なVHSに比べ、ベータマックスは、画質が良い代わりに録画時間が1時間程度しかありませんでした。
映画を録画しようと思ったら、2本に分割して録画するはめになります。
さらに、ハリウッドがVHSの支持を発表したことで、ベータマックスの敗北は決定的になったのです。
3 エイズ・チョコ
世界規模で見ると、エイズに関連した死亡者数は2005年より減少し続けており、約10年前に比べると半減しています。
エイズという病気についての認知度が急激に高まったのは1980年代半ばですが、言うまでもなく、その時代は今よりもこの病気の脅威はずっと深刻なものでした。
そして、よりにもよってそんな時代に、「エイズ(Ayds)」という名前のチョコレート菓子がアメリカで販売されていたのです。
食欲を抑える効果のある、ダイエット目的の商品で、1970年代にはかなりの人気を誇っていましたが、エイズ(AIDS)の危険性に対する理解が広まるにつれて、その病気を連想させる商品を避ける人が増えてしまい、売上げが激減。
そうなると、マトモな経営者であれば、商品名の変更を検討するでしょう。
エイズ・チョコを販売していた会社も、もちろん名前を変えました。
「ダイエット・エイズ」に。
冗談のようですが本当の話です。
「エイズ」という言葉が問題なのに、会社としては、どうしてもその言葉を入れたかったようです。
なぜ「ダイエット・チョコレート」のような単純なネーミングを考えなかったのか理解に苦しみますが、その後、売上げを回復することは出来ず、このチョコは店から完全に姿を消しました。
4 マック・スプーン
かつてイギリスのマクドナルドでは、コーヒーをかき混ぜる際に使用するプラスチック製スプーンを客に提供していました。
一般的なスプーンに比べると、かなり柄の部分が長く、先端が小さくなっているのが特徴です。
マクドナルドとしては、まさかこのスプーンが犯罪に使われるなどとは思いもよらなかったでしょう。
ところが、このスプーンの提供が開始されてからしばらくして、麻薬捜査の過程で容疑者のアジトから、やたらとマクドナルドのスプーンが発見されるようになりました。
実は、ヘロインと他の物質を調合するのに、このスプーンの大きさが絶妙にピッタリだったのです。
ドラッグの売人は、通常は天秤を使って調合するのですが、それゆえに天秤があると不利な物的証拠となってしまうため、彼らはマクドナルドのスプーンを代わりに使用し始めていました。
やがて、「マック・スプーン」という言葉は、俗語で10ドル分の麻薬のことを指すまでに至ります。
警察からこの事実を知らされたマクドナルドは、スプーンの提供を中止し、代わりにただのスティックを出すことに。
飲食店などが何らかの新しいサービスを始めるときは、事前にリサーチを行ったりするでしょうが、さすがに薬物中毒者の存在はマクドナルドにとって予想外だったのでしょう。
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5 タブ・クリア
2018年、透明なコカ・コーラである「コカ・コーラ クリア」が発売され、話題を呼びました。
ツイッターのトレンドワードにも入るほど注目を集めていましたが、しかし、コカ・コーラ社が透明なコーラを発売したのは、実はこのときが初めてではありません。
1992年にアメリカで「クリスタル・ペプシ」という透明ペプシコーラが発売されたのに対抗して、同じ年にコカ・コーラ社は「タブ・クリア」という、コーラ風味の透明のドリンクを発売したのです。
しかし、透明である点が売りなのに、何故かボトルではなく缶で製造されていたため、グラスに注がないと透明であることが確認できないという謎仕様でした。
カロリーゼロであることから、ダイエット商品としての性格を全面に押し出してキャンペーンが行われたのですが、消費者からは普通のコカ・コーラの劣化版という印象で見られ、さほどヒットせず。
しかも、同じく透明ドリンクである「クリスタル・ペプシ」も、消費者からダイエット・ドリンクであるかのように誤解され、人気が低迷。
結局、どちらの商品も共倒れになりました。
そしてこれこそが、コカ・コーラ社の狙いだったのです。
コカ・コーラ社は、最初からクリスタル・ペプシを潰す目的で、類似の商品であるタブ・クリアを市場に投入して双方を失敗に終わらせたのです。
商品名にコカ・コーラという言葉を使わなかったのも、コカ・コーラのブランドに傷が付くのを避けたかったから。
余談ですが、コカ・コーラ社は過去に「コカ・コーラ ブラック」という、コーヒー風味のコーラも出しています。
もともと黒いコカ・コーラに、わざわざ「ブラック」という言葉を使ったこの珍商品は、味がかなりアレだったそうで、やはりこれも失敗に終わっています。