パソコン上で再生できるものであれば、(ほぼ)何でも録画できてしまうという『B’s 動画レコーダー』シリーズの最新版『B’s 動画レコーダー10』が発売された。
僕自身は、ずいぶん前に買った『B’s 動画レコーダー6』をずっと愛用していたのだが、今回、記念すべき(?)10作目が登場したのに合わせてバージョンアップしてみたのである。
7,8,9をすっ飛ばして10にしたので、さぞかし便利になっているだろうと思っていたのだが……。
現実はそう甘くはなかった。
1 Pro版は廃止
バージョン9までは通常版とPro版の2種類が用意されていた。
Pro版は、動画の圧縮機能とDVDオーサリング機能が備わっており、価格が通常版よりもやや高い。
しかし、バージョン10からはPro版が無くなり、通常版のみの販売となっている。
バージョン10には動画圧縮機能はあるが、DVDオーサリング機能は無い。
録画した動画でDVDを作成したければ、同社の「B’s Recorder」を買えということだろう。
2 『動画レコーダー10』最大のウリ
今回のバージョンアップで最も強化されたのは、YouTubeの録画である。
「YouTube録画」というボタンを押すだけで専用のブラウザが立ち上がり、好きな動画を簡単に録画できるようになっている。
動画のタイトルも自動で取得し、その名前でファイルが生成されるので、動画の管理も簡単。
CMを自動でカットする機能も盛り込まれており、いちいち編集でCMをカットする必要も無い。
予約録画機能もあるので、ライブ配信もバッチリである。
YouTube上の動画は期間限定で公開されているものも珍しくないので、普段からよくYouTubeを観る人にとっては便利な録画機能が充実している。
このように、YouTube録画が手軽にできるのはいいが、逆に言えば、それ以外の録画に関しては、過去のバージョンからほとんど何も変わっていない。
むしろ、劣化した部分がある。
先述のとおり、僕は「6」から「10」にバージョンアップしたわけだが、「6」では録画終了時間を指定して録画することができた(いわゆる録画終了タイマー機能)。
例えば、YouTubeの動画を録画するとき、動画の再生時間を指定しておけば、後は離席しても動画終了と同時に録画も終了していた。
しかし、「10」ではこの機能は削除されている。
よって、手動で録画を停止しない限り、延々と録画が続く。
これはいかにも不便。
再生時間をオーバーして録画された余計な部分は、『動画レコーダー』の編集機能を使えばカットできるが、一手間増える。
終了タイマー機能をなぜ削除したのかは分からないが、改悪という他ない。
大げさに感じるかも知れないが、個人的にはこの一点だけで、バージョン6に戻したいくらいである。
3 Amzon Prime等は録画できない
ディスプレイに表示されるものであれば何でも録画できそうなソフトウェアではあるが、Amazon PrimeやDMM TV等、有料動画配信サービスの動画は録画できないので注意しよう(そもそも録画すると規約違反となる)。
仮に録画しても何も映っていない真っ黒な動画が作成されるだけである。
ちなみに、「B’s 動画レコーダーでは無理だけど、ウチのソフトウェアなら録画可能ですよ!」などと謳っている海外製の商品も、録画不可能と考えて間違いない。
騙されて無駄金を払わないようにしよう。
4 録画のプロファイルは作れない
録画する際のフレームレートやフレーム間隔、画質などは設定画面にていじることができる。
この点は「6」から特に変わっていない。
そして、相変わらずプロファイルを作成できないところも全く変わっていない。
録画する対象によって、画質を変えたり、フレームレートを変えたりすることはよくある。
例えば、会議などを録画する場合は、画面に動きがほとんど無いので、フレームレートやビットレート(画質)は低くても問題ない。
そこで、各種設定内容をプロファイルとして保存できる機能が役に立つ。
「YouTube録画」とか「会議録画」などと名前を付けてプロファイルを保存しておき、それらを録画の際に呼び出せれば非常に便利なのだが、録画レコーダーではそれが出来ない。
設定をいじりたければ、録画の前に予め設定し直す必要があり、これがけっこう面倒。
技術的に難しいことではないと思うのだが、何故この機能を実装しないのかは謎だ。
5 ハードウェアエンコードが微妙
バージョン6までには無かった機能として、グラフィックボードを使ったハードウェアエンコードが挙げられる。
IntelのQSVに加えて、NvidiaのNVENCなどが使用できるのだ。
ただし、設定画面においてQSVやNVENCを選択するようなことは出来ない。
単に、ハードウェアエンコードを使用するか否かが選べるだけだ。
よって、ハードウェアエンコードの使用時に、QSVとNVENCのどちらが使われているのかはよく分からない。
CPUとGPUの使用率などを調べれば判明するのだろうが、そこまでする価値があるのかどうか。
これはあくまで僕のPC環境での話なのだが、「6」と「10」のハードウェアエンコードを比較しても、大きな違いは見受けられなかった。
6 細かい設定不可の圧縮機能
バージョン9までは「Pro版」のみに動画の圧縮機能が付いていた。
画質を落とさずにファイルサイズを小さくできるという有り難い機能である。
先述のとおり、バージョン10ではPro版が無くなり、通常版にこの機能が引き継がれている。
圧縮のやり方は、録画した動画のリスト上で、任意の動画に対して「サイズの圧縮」を選択するだけ。
ファイルサイズの指定やビットレートの設定などは一切できない。
ただ「圧縮」するだけだ。
圧縮率は元の動画内容によってまちまち。
ファイルサイズを50~60%減少できることもあれば、10~20%しか小さくできないこともある。
ただ、圧縮率に関わらず、変換後の画質は元の動画と比べてほとんど遜色ない。
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結論 やや微妙なバージョンアップ
「6」から「10」にバージョンアップしたことで、動画を録画するのがかなりやりやすくなるだろうと期待していたのだが、結果は少々残念なものだった。
ましてや、「9」から「10」にバージョンアップした場合、大きな違いは実感できないだろう。
特に、僕は「6」の録画終了タイマーをフル活用していたので、それが削除されていたのが痛すぎる。
とは言うものの、これから初めてこのソフトを購入するという人には、問題なくオススメできる。
特に、YouTubeを手軽に録画・編集したい人にとっては魅力的な機能が詰まっていると思う。
一方、以前のバージョンを既に持っていて、大きな不満も無く使えている人にとっては、バージョンアップする必要性は低い。
バージョン10からは、Pro版が廃止されて通常版だけになり、バージョンアップ料金が実質値上げされたので、なおさらである。