子供を被験者
にして実験を行う。
何だか、聞いただけで残酷な感じがする。
そして実際、子供に対する実験で、残酷なものは少なくない。
現在ではあまり考えられないが、かつてはそういう実験も行われていた。
今回は、そういった実験のいくつかをご紹介する。
〈originally posted on December 16,2014〉
1 ロバーズ・ケイブ実験
これは、グループ間に生じる衝突の原因や改善策についての理論(Realistic Conflict Theory : RCT)を研究するための実験として行われたもの。
1954年、アメリカ、オクラホマ州にある、ロバーズ・ケイブ・ステート・パークと呼ばれるキャンプ地に22人の少年たち(11~12歳)が集められた。
彼らはみな中流家庭の育ちで、お互いに面識は全く無し。
始めに、22人の少年達は2つのチームに分けられ、相手チームと競い合う様々な「ゲーム」を行うように指示された。
勝利を収めたチームには「報酬」が用意されていたこともあって、それぞれのチームは、相手チームを何とかして出し抜くために綿密に計画を練っていた。
ところが…。
相手チームに対する敵意は次第に増幅し、互いを罵り合ったり、殴り合ったりという事態にまで発展。
中には、相手チームの所持品を盗んだり、火を付けるなどの行為もあったとか。
ついには、実験主催者の手に負えない状態になってしまい、実験は中止となった。
2 ザ・サード・ウェーブ
1967年、米国カリフォルニア州にあるカバリー高校で、ロン・ジョーンズという歴史の教師によって行われた実験。
彼は、ナチズムの本質を生徒たちに説く手段として、生徒たちを全体主義化していくような実験を試みた。
規律を厳守することを徹底して命じ、軍隊のような挨拶を強要するなどの過程を経て、生徒たちは徐々に団結力を強化していったのである。
そして、次第に自分達の言動にそぐわない他の者たちを敵視するようになっていった。
まさに、1つのクラスからナチズムの萌芽が見られたのだ。
ところが…。
実験5日目にして、生徒の行動が予想以上にエスカレートし、教師たちの手に負えなくなったために実験は中止となった。
3 リトル・アルバート
1920年にアメリカのジョンズ・ホプキンス大学 で、ジョン・B・ワトソン によって行われた実験。
この実験では、まず、「アルバート」と名付けられた9歳児が、実験用のネズミとともに、ある小部屋に入れられた。
アルバートがネズミに興味を示し、それで遊んでいるのが分かると、アルバートがネズミに近づこうとした瞬間にハンマーで鉄板を激しく叩くのだ。
アルバートは泣きわめき、その後、ネズミに対して恐怖心を抱くようになって二度と近づかなくなったそうである。
不快な体験と直結したものに対して、アルバートがどういう反応を示すのかを調べるのが目的だったが、9歳児に行う実験としてはあまりにヒドいものだった。
4 ビジュアル・クリフ実験
赤ん坊を崖っぷちに向かって進ませると、崖下に落ちることへの恐怖心を抱いて立ち止まるのか。
これを調べるため、「深さ」を認識する能力が生来的なものなのか、経験から習得されるものなのかを調べる実験が行われた。
本当の崖っぷちで行うわけにはいかないので、見た目には途中から足場が無くなっているようだが実はガラスの板が張られている、「ビジュアル・クリフ」というセットを室内に設置。
赤ん坊が、母親のもとにたどり着くために、ビジュアル・クリフの上を這っていると、途中から足場が無くなっているのに気付く。
そのまま母親のとことまで到達する子もいれば、不安気な表情でまったく動かなかった子も。
結局、どの赤ん坊も「深さ」自体は認識していたが、それでも前に進み続けるかどうかは、周りの状況や、母親とのコミュニケーション等が影響するらしい。
5 ブロークン・トイ実験
ここまで読んでいただいた方には大体予想がつく実験かもしれない。
これは、就学前の児童を対象に「罪悪感」について研究するために行われたもの。
被験者である子供に対し、これは特別なおもちゃだという事を伝えて、そのおもちゃと子供だけを置いて、実験者は退室。
実はこのおもちゃには細工がしてあり、ちょっと触れただけで壊れるようになっている。
案の定、子供がおもちゃに触れてそれを壊すのだが、その時の子供の様子を映像に記録していたのである。
しかし…。
子供たちが抱く「罪悪感」は非常に強く、中には、トラウマを作ってしまった子もいたという…。