今回は、普通の人にはとても理解できない、常軌を逸した実験の数々をご紹介します。
現代では、人に対して何らかの実験を行う場合、安全面には十分な対策が取られた上でなされるのが通常です。
実験を受けたことが原因で、被験者の健康を害することがあっては洒落になりません。
しかし、時代を遡ると、かなり無茶な形で行われていた実験もあるのです。
〈originally posted on September 17,2016〉
1 モンスター・スタディ
1939年に米国アイオワ州ダベンポートで、アイオワ大学のウェンデル・ジョンソンの監修により行われた吃音症(言葉がスムーズに出てこない症状)に関する実験。
この実験では22人の孤児たちを集めて2つのグループに分け、それぞれに真逆の「指導」を施します。
一方のグループに対しては喋り方が適切であることを褒め、他方のグループに対しては少しでも喋り方がおかしいとそれを指摘し、吃音症が原因であると告げるのです。
その結果、ネガティブな指導を受けたグループの一部は、もともと何の問題も無かったのに、実験が与えた心理的効果によって吃音症に苦しむようになりました。
しかも、その症状は実験の後も治ることは無かったのです。
ちなみに、「モンスター・スタディ」という名前は、この実験の残酷な面を捉えて、ジョンソンの同僚が付けたと言われています。
実験が行われた時期がちょうどナチによる人体実験の開始時期と重なっていたため、ジョンソンの評判に傷が付くことを恐れてモンスター・スタディの存在は隠されていました。
アイオワ大学がこの実験について公式に謝罪したのは2001年のことです。
2 ミルグラム実験
1974年、イェール大学のスタンリー・ミルグラムによって行われた、権威者への服従に関する実験。
この実験では、教師役の被験者と生徒役の仕掛人とが、互いに姿は見えず音声のみがインターホンで聞こえる別々の部屋に分かれます。
教師は生徒に簡単な問題を出し、不正解ならば手元のスイッチで生徒に電気ショックを与えるのです。
間違える度に電気ショックの威力は上がっていき、それにつれて生徒の悲鳴も大きくなります。
教師役の被験者が途中で止めたいと申し出ても、実験の監督者からはそのまま続けるように指示されるのみ。
かなり残酷な実験ですが、実は電気ショックは真っ赤なウソで、生徒の悲鳴も事前に録音しておいた音声が流れているだけ。
実験を通して、監督者の指示に逆らわず生徒に最大威力の電気ショックを与えた被験者は全体の65%でした。
つまり、参加者の半数以上は、権威者からの指示がいかに残酷であろうとそれに従ったということになります。
3 スタンフォード監獄実験
1971年、アメリカのスタンフォード大学で、心理学者フィリップ・ジンバルドー監修の下に行われた実験。
特定の役割を演じるように指示された人間の行動が、どのように変化していくかを調べるためのものでした。
被験者たちは看守役と囚人役とに分かれ、それぞれの役割に応じた行動を取るように指示されます。
実験開始直後は何の問題も無かったのですが、囚人役が反抗的な態度を見せたときから実験は危険な方向へと転落し始めます。
看守役はその権力を振りかざして次第に攻撃的になり、囚人役に暴行を加えたり、屈辱的な行為を強制する者が出てきました。
一方で囚人役は、精神的な疲労が限界を超え、もはやこれが実験であることすら分からなくなっている者も。
あまりに危険な状態になったため、実験は開始から5日後に中止されました。
関係者が想定しなかった結末を迎えたものの、この実験により、人が権力を手にしてそれを濫用し始めると歯止めが効かなくなるという危険な一面が証明されたのです。