学校で教わる英語表現の中で、最も罠にかかる危険が高いのは間違い無く had better である。
その「罠」について考察してみようと思う。
had better は、恐らくほとんどの人が高校1年で学習し、文法的に特に複雑な要素は無い。
にも関わらず、正しく使うのは意外と難しいのだ。
〈originally posted on November 18,2014〉
「~したほうがよい」の罠
学校で教えられる had better の意味はほぼ確実に「~したほうがよい」である。
しかし、この訳は実際の使われ方との間にやや隔たりがある。
「~したほうがよい」という表現には、相手に対するやさしいアドバイスのような響きがあるが、実際は必ずしもそうでないことが多い。
had better の意味は基本的に「こちらの言う通りにしなければ、何か不利益が起こる」というものだ。
よって、使う相手によっては警告に近い意味になることもあるし、目下の相手に使う場合はその傾向が強くなりうる。
一方、友人に対して使う場合、内容によっては警告のような深刻さは無く、単純に相手に対する気遣いを表していることも多い。
また、意味が似ている should は had better よりも意味が弱いので、「警告」的な意味よりは純粋に「アドバイス」を表すことが多い。
以上の説明は、学校の授業では軽く触れる程度なのが一般的と思われるが、市販されている高校生向けの英文法参考書には大抵書かれてある。
「目上の人には使えない」の罠
had better に罠が多いと言わざるを得ないのはこの点である。
大抵の文法参考書には、had better は「目上の人に使うべきではない」と書かれてある。
確かに、had better が警告の意味を表すことが多いのであれば、目上の人に使うのは不適切だろう。
しかし、ここで重要なのは、英語は日本語ほどには身分の上下関係が表現の選択に影響しないという言語事実だ。
よって、had better を目上の人に使うことはありうる。
つまり、この表現は、正確には目上の人に「使えない」のではなく、「注意して使うべき」なのである。
例えば、明らかに体調の悪そうな上司を見て。
You had better see a doctor.
などというのは何ら問題ないのだ。
以上に見てきたように、 had better の用法は意外に難しい。
そもそも学校や塾などで、この表現についてどこまで正しく教えているのかは疑問だ。
単純に、「~したほうがよい」という意味しか教えないのではれば、かなり不親切といえるかもしれない。
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