10本のクジの中に3本の当り
がある。
これを10人で順番に引いていく場合、最初に引く人が有利なのか、あるいは最後が有利なのか。
選択肢の多い最初の段階で引く方が、何となくオトクな感じがする、という人が多いのではないだろうか。
しかし、その一方で、最後の方に引くのが有利かもしれないという印象もある。
かの有名な、「残り物には福がある」という言葉の存在が原因だ。
果たして、これは真実なのか否か……。
〈originally posted on October 31 ,2014〉
1 「残り物に福」はあるのか?
こういう場合、なるべく先にクジを引く方が有利なように感じてしまうのは何故なのか。
最初に引く人は、10本の中からじっくり選んで引くことができる。
一方、最後に引くことになってしまった人は、選択権が何も無い。
ただ「残り物」を受け入れるのみである。
おそらくはこういう面が、「最初の方が有利」という印象を与えるのだろう。
ところが……。
純粋に確率論で捉えると、この場合、何番目にクジを引こうが当りを引く確率は全く同じなのである(その証明には高校数学の知識を要する)。
つまり、最初に引く人が特に有利なわけでも、最後に引く人が不利なわけでもない。
「残り物に福」ということは無いのだ。
思い込みの確率と実際の確率とは違うということである。
2 モンティ・ホール問題とは
思い込みと現実の確率との違いが顕著にあらわれる別の例に「モンティ・ホール問題」というものがある。
あなたがクイズ番組で優勝したと仮定しよう。
優勝賞品は車である。
ただし、すんなりともらえるわけではない。
スタジオに3つの扉が用意され、そのうち1つの扉の向こうに車が、他の2つの扉の裏にはヤギが隠されている。
そして、どれか1つの扉を選択し、見事に車が現れたらそれをゲットできるのだ。
さて、問題はここからである。
司会者はどの扉の裏に車があるのかを知っているのだが、あなたが任意の扉を1つ指定した段階で、ヒントとして残り2つの扉のうちの1つ(車が置かれていない方、即ちヤギのいる扉)を開けて見せてくれるのだ。
つまり、優勝者がどれかの扉を選んだ時点で、必ずヤギの扉が一つ解放されるというわけである。
残る扉は2つ。
次に司会者は優勝者にこう尋ねる。
「扉を選びなおしますか」
2つの扉のうち、片方が車でもう片方がヤギなのは明らか。
ここで優勝者は、最初に選んだ扉のままいってもいいし、選び直してもう一方の扉にしてもよい。
一体どちらが有利なのか。
あるいはどちらも同じなのか。
この問題をご存じなかった方は、ぜひ一度自分で考えてみて欲しい。
↓
↓
↓
↓
答え:「どちらも同じ」ではない!
正解は、「選びなおした方が2倍有利」なのである。
恐らく、「どちらも50%の確率だから、同じ」と思われた方が多いのではないだろうか。
しかし、以下の表をご覧いただきたい。
「選び直し」ナシ | 「選び直し」アリ | |
---|---|---|
車をゲットする確率 | 3分の1 | 3分の2 |
ヤギをゲットする確率 | 3分の2 | 3分の1 |
この問題のポイントは次の2点。
- 優勝者は必ず「車の扉」と「ヤギの扉」の2択に落ち着く。
- この時点で「選び直す」ことは結局、先に選んだのとは違う方を選ぶことを意味する。
ということは、先の選択が「ヤギの扉」であれば、必ず「車の扉」を選ぶことになる。
そして、先の選択が「ヤギの扉」である確率は3分の2だから、最終的に「車の扉」を選ぶ確率も3分の2になるというわけだ。
これが、有名な「モンティ・ホール問題」と呼ばれるものである。
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