言葉の解釈の違いや勘違いが、悲惨な結果を生んだ事例をご紹介します。
プロの通訳者であっても、訳し間違えることは皆無ではないでしょう。
しかし、場合によってはその「誤訳」が笑えない結末を生むこともあるのです…。
1 ポーランド人の「肉体」が欲しい
1977年、アメリカ合衆国大統領ジミー・カーターがポーランドを訪問した際に起きた悲劇。
この時、カーター大統領がポーランド国民に向けてスピーチを行ったのですが、その冒頭部分は以下のような内容でした。
「私は、ポーランドの未来に対する皆さんの考えを知り、要望を理解するべくここにきました」
ところが、通訳を務めたスティーヴン・シーモア氏は次のような意味に訳してしまったのです。
「私はポーランド人の肉体が欲しい」
これだけでもかなりマズイことになっていますが、シーモア氏の誤訳はまだ終わりません。
カーター大統領は続けて、ポーランドに滞在できてとても嬉しい、ということを述べたのですが、これを
「ポーランド人の股間をつかめて嬉しい」
と通訳。
また、大統領が、合衆国を出発したときのことを述べたときは、
「私は合衆国に戻るつもりは無い」
と誤訳し、さらに、ポーランドの憲法について、人権保障を国民が勝ち取った結果であると賞賛した際は、
「ポーランドの憲法は滑稽だ」
とトンデモ訳を連発したのです。
当然の結果として、ポーランド国民はカーター大統領の無礼極まりない発言に憤慨したそうです…。
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2 馬とヤッてるよ
1961年4月、ジョン・F・ケネディ大統領がオランダの元外務大臣であるヨゼフ・ルンス氏と面会した際、趣味について尋ねたのですが、それに対するルンス氏の答えが、
I fok horses.
というものだったのです。
ここで重要なポイントは、「fok」という単語はオランダ語で「飼育する」という意味だということ。
つまり、ルンス氏は「馬の飼育」が趣味だと言いたかったのですが、ケネディ大統領は「fok」を「fuck(性交する)」と聞き間違えて、
Pardon? (もう一度言ってもらえますか)
と聞き返したのです。
しかし、これまた運の悪いことに、「馬」を意味する「Paardon」というオランダ語が存在したため、ルンス氏は
「その通り、馬なんですよ!」
と答えて、結局ルンス氏は馬とヤるのが趣味の変な人と思われたままに終わったとか。
ただし、このエピソードはあまりに出来すぎていて、都市伝説ではないかとも言われています。
3 失礼します。便秘なんです…
ある国際会議での悲惨な誤訳事件。
スペインの代表委員が、フランスの代表委員と話しているとき、風邪で気分が悪くなったので、
「ちょっと失礼します。風邪を引いているので」
とスペイン語で話したのですが、そばにいた通訳者が何を勘違いしたのか
「ちょっと失礼します。便秘なので」
という意味のフランス語に訳してしまい、その場にいたフランスの代表団が爆笑したそうです。
その通訳者はすぐにミスに気づき、誤解を解こうとしたものの、しばらく爆笑は続いたとか…。
日本語に溶け込んでいて、圧倒的に間違った使われ方をしている英語に真面目にツッコミをいれてみました。
4 荷が重過ぎるボタン
2009年3月、ロシアとの関係改善に向けて同国を訪れていたヒラリー・クリントン氏は、両国の関係を一旦リセットし、今後は新たに協調関係を築いていくことを記念して、模型で出来た「リセットボタン」を用意してきたのです。
そして、当時のロシア外務大臣であったセルゲイ・ラブロフ氏とともに、そのボタンを押すという段取りだったのですが、その際、「リセット」という意味のロシア語として「peregruzka」という単語を使ったのです。
しかし、この単語、実は「リセット」という意味ではなく、「荷が重すぎる」という意味のロシア語だったため、その場に微妙な空気が流れたとか…。
5 お前らを埋めてやる!
1956年、ソビエト連邦指導者であったニキータ・フルシチョフは、モスクワのポーランド大使館で行われた会議で、西欧諸国の大使たちに向かって、
「お前らを埋めてやる!」
と言い放ったとされています。
この衝撃の事実はソビエトと西欧各国の新聞の見出しを飾り、これが原因で両者の関係に暗雲が立ち込めたとされています。
しかし、もちろんこれも誤訳が発端。
フルシチョフ氏はこの時、カール・マルクスの『コミュニスト宣言』の中の一節に言及していたのです。
それは、「ブルジョワジーが生み出すのは結局のところ、自分達の墓穴を掘る者だけである」と述べて、資本主義がやがて内部から崩壊していくことを指摘した部分でした。
どうやら、この「墓穴を掘る」あたりに関わる表現が、「お前らを埋めてやる!」と誤訳されたのではないかと見られています。
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