極めて稀な病気が原因となって起こる不可思議な体験の数々をご紹介します。
医学がいかに進歩したとは言っても、まだ治療法が見つかっていない難病・奇病は少なくありません。
そして、一般的にほとんど知られていない珍しい病気の中には、通常では考えられないような体験につながるものもあります。
それらは、日常生活に特に支障の無いものから、人の生き方そのものを変えてしまうものまで様々です。
〈originally posted on March 30,2016〉
1 頭脳だけ子供に逆戻り
であれば名探偵として活躍できる可能性もありそうですが、逆に体が大人で頭脳が子供だと色々と不便が出てきそうです。
実際に、ある日突然そのような状態になった人がいます。
ナオミ・ジェイコブスという32歳の女性は、自己破産や薬物中毒、ホームレス生活などを経験して精神的に相当追い込まれていました。
2008年、彼女がある朝目覚めてみると、過去17年間の記憶がスッポリと抜け落ちていたのです。
ジェイコブスが思い出すことの出来た一番最近の記憶は、彼女が15歳の時に姉と一緒に堤防で会話をしていた時のこと。
フランス語のテスト勉強のことを話していたのでした。
本人からすれば、眠りから覚めると自分の体や周りの世界がいきなり17年後のものになっていたというわけです。
彼女は21世紀になってからのテクノロジーが分からず、おまけに自分の10歳の子供にも見覚えがありませんでした。
専門家の見解では、ジェイコブスは過度の精神的ストレスに悩まされていたために、脳が記憶の一部をゴッソリ消去してしまったのではないかということです。
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2 世界が突然3次元で見える
目に映る光景を3次元で捉えることが出来ないという珍しい病気があり、これは世界で数パーセントの人にしか見られないそうです。
この症状があると、周りの景色がのっぺりとした平面にしか映らず、遠近感を感じられません。
この病気は多くの場合幼少期に発症し、生涯治ることは無いと言われています。
ブルース・ブリッジマンという男性もこの症状を患っていたのですが、彼は非常に稀な体験をしました。
2012年、マーチン・スコセッシ監督の映画『ヒューゴの不思議な発明』を観に行こうとしたのですが、上映している所が3Dシアターしか見つからず、やむなく劇場で3Dメガネを買うはめに。
もちろん、彼にとっては無用の長物です。
ところが、このメガネをかけて映画を観始めた瞬間、彼は映画の映像のみならず周りのあらゆる物を3次元で見られるようになったのです。
その効果は劇場を去った後も続きました。
医者によれば、3D映画を観たことがきっかけとなって、脳内に新たな神経回路が生まれたのではないかということです。
3 ダジャレが止まらない
事あるごとにダジャレやジョークを連発する人は珍しくないですが、実際に病気としてこの症状に苦しんでいる人が存在します。
かなり初期の例では、1929年にドイツの神経学者オトフリート・フェルステルが患者の脳から腫瘍を取り除いたところ、その患者はダジャレを言うのが止まらなくなりました。
非常に稀な症状ですが、前頭葉が障害を被ることでこの症状につながる可能性があるそうです。
比較的最近の例では、イギリス国営放送のBBCが取材したデレックという名の男性がいます。
彼は脳卒中を経験した直後からダジャレや冗談を言うことが止められなくなり、寝ている時でさえ自分のダジャレに笑いを抑えきれなくなるのです。
その結果、彼の奥さんは精神的にかなり参ってしまいました。
意外なことに、この症状に苦しむ人は他人のジョークなどには全く反応しないことが多いのだとか。
この奇妙な病気の原因として、脳内でドーパミンの分泌を司る部位が損傷するためではないかとも言われています。
4 頭が爆発する
疲れてウトウトしている時、突然誰かに自分の名前を呼ばれたような気がしてハッと目が覚めた経験がある人は少なくないでしょう。
専門的に見ると、このような現象は人によって頻度に差はあれど、決して珍しいものでは無いそうです。
しかし、中には自分の名前ではなく、突然の爆発音に安眠を妨害される人がいるのです。
「頭部爆発症候群」というこの症状を持つ人は、睡眠中に枕が爆破されたのかと思うほどの音が聴こえるのだとか。
原因は完全には解明されていませんが、睡眠状態に移行する際に脳内で音の処理を司る神経回路が一斉に活性化するからではないかと言われています。
5 自分の体に他人の腕が生えている
の一部が損傷することによって、自分の腕や足が他人の物であるかのように感じてしまう症状があります。
一旦これを発症してしまうと、自分の身体に他人の腕や足が付いているという考えが頭から離れず、そのことを周りの人から否定されても決して受け入れられないのだとか。
この症状を持つ人は、自分の身体の一部がエイリアンに移植されたと思ったり、自分は特殊な能力を持った存在であると感じたりすることがあります。
統合失調症が悪化してこの症状が現れたある男性は、自分の右腕が「マリア」という知人の女性の物だと信じて疑わなかったそうです。
6 ドッペルゲンガーが見える
自分と全く同じ外見をした「分身」とも言うべきドッペルゲンガーは、フィクションの中だけの物ではありません。
実際に自分の分身に遭遇したという人は存在するのです。
今から約20年前、神経心理学者のピーター・ブラガーは、驚くべき体験をしたチューリッヒ出身の21歳の男性に会いました。
その男性がある朝ベッドから起き出て振り返ってみると、そこにはベッドで寝ている自分の姿があったのです。
驚いてもう一人の自分に向かって叫び声を上げると、次の瞬間、彼はベッドの上に横になっており、目の前では自分と同じ姿をした男が叫び声を上げていました。
ベッドで横になっている自分と、叫び声を上げている自分と、一体どちらが「本物」の自分なのかが分からず、彼はパニックに陥って4階の窓から飛び降りました。
幸い、命に別状は無かったようです。
この男性は脳の側頭葉に腫瘍があり、それがこのような現象を引き起こした一因ではないかと見られています。
7 記憶能力が喪失
2005年3月14日午後1時40分、軍隊に所属していたウィリアムという名の男性が歯の治療を受けていたときのこと。
局部麻酔の注射が打たれた瞬間、彼は記憶を保持するという能力を失ったのです。
最初は麻酔に対する過剰反応が原因かとも思われましたが、その後の精密検査の結果、麻酔の影響は無く、記憶できないこと以外は身体的にも全く問題が無いことが分かりました。
彼は現在、およそ90分間の記憶を保つことしか出来ません。
それを超えると全て記憶が消去されます。
ウィリアムが起きているとき、彼の中でこの世界は常に2005年3月14日の午後のままなのです。
8 鏡が理解できない
脳内で認知症に関連する部位が損傷を受けることで発症する極めて珍しい病気に「鏡失認症」というものがあります。
この症状が現れると、文字通り鏡が何なのかを認識できず、鏡に映った物を正しく把握することも不可能になります。
例えば、患者を鏡に向かって座らせ、その背後でリンゴを掲げると、その患者は自分の目の前にリンゴがあるものと勘違いして鏡に手を伸ばしてしまいます。
鏡が一体どういう役割を果たすものなのかを説明してもこの状態は変わらないそうです。
また、この病気は一度発症してしまうと最早二度と鏡を理解することは叶わないと言われています。
9 心臓が移動する
2014年、イギリスのBBCがカルロスという年配の男性についての特集を組みました。
この男性、心臓が弱いために「補助人工心臓」が腹部に埋められているのです。
それ自体はさほど珍しくはないですが、この男性が特殊なのは、自分の本当の心臓が腹部にあるとしか感じられなくなったという点です。
さらに不思議なことに、カルロスは自分の心臓が腹部へ移動した感覚に陥ると同時に、他人の感情を理解することが出来なくなりました。
端的に言えば、社交性が失われてしまったのです。
10 一睡も出来なくなる
日本人だけでも5人に1人は不眠症に悩まされているそうです。
不眠症は健全な睡眠を得られなくなる症状ですが、全く眠れなくなるわけではありません。
しかし極めて稀に、眠るという機能が完全に失われてしまう病気があります。
「致死性家族性不眠症」と呼ばれるもので、遺伝的な要因で発症するようです。
この症状が出てしまうと、眠ることが死ぬまで不可能となります。
何日間も眠れない日々が続き、起きているにも関わらず夢の中にいるかのような奇怪な行動に出てしまいます。
次第に発話能力や歩行能力が失われ、最終的に死に至るのです。
この病を発症する遺伝的要因を持つ家族は、世界でわずか40ほどとされています。
さらに、その遺伝子を受け継いでいるからといって必ずしも発症するとは限らず、通常の不眠症にすらならない場合も多いのだとか。
しかし、ある日の夜、寝ようとしたのに眠れないことに気づき、しかもその原因がこの病気だった場合は悲惨な運命が待っています。
現在、この病気に対する有効な治療法は無く、苦痛を軽減させる手段もありません。
永遠の眠りにつく瞬間まで起き続けるしかないのです。
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