他人を誹謗中傷するツイートが原因で、民事訴訟に発展するケースが増えてきています。
そういった報道がなされることが、攻撃的なツイートに対する抑止力になっているかと言えば、そうでもないようです。
悪質なツイートで特定の個人や団体を不快にさせたくてウズウズしている人間は、減るどころかむしろ増加している印象すらあります。
そんな状況を受けて、先日、大阪府では、ネット誹謗中傷対策の条例が可決されました。
この種の条例制定は群馬県に次いで二番目であり、今後は他の都道府県でも同様の取り組みがなされることでしょう。
そして忘れてはならないのは、問題のあるツイートは、民事責任ばかりではなく、刑事責任を問われる可能性も十分にあるということ。
今回は、一回のツイートが招いた逮捕の事例をご紹介しましょう。
〈originally posted on March 28, 2022〉
1 航空会社へ洒落にならないツイート
2014年4月、オランダのロッテルダムに住む10代の女が、アメリカン航空の公式アカウントに対し、次のようにツイートしました。
「私の名前はイブラヒム。アフガニスタン人よ」
「アル・カイダに属しているんだけど、6月1日に何かデカいことをするつもりだから」
何かデカいこと……
。
はっきりとヤバいことが書かれているわけではありませんが、常識的に考えて、このツイートは見過ごせません。
アメリカン航空側は、彼女へのリプライとして、
「我々は先程の脅迫を大変重く受け止めており、あなたのIPアドレス等の情報をセキュリティ部門及びFBIに伝える予定です」
とツイート。
これを見た彼女はパニックに陥り、急いで弁明のツイートを連投。
「えーっ!冗談だってば!」
「ごめんなさい。ちょっと怖くなってきた」
「実はツイートしたのは私の友人なので、IPアドレスはその子のやつを調べてよ!」
なんとも分かりやすい苦し紛れの言い訳。
彼女の話では、単にネット上で有名になりたかったから上記のようなツイートをしたのだとか。
確かに有名にはなりました。
主に悪い意味で。
さらに、このツイートが原因で、彼女は自宅にて逮捕されています。
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2 トランスジェンダーに対する侮蔑
個人に対する露骨な誹謗中傷でなくても逮捕に発展するという例をご紹介しましょう。
2019年、イギリス在住のケイト・スコットウという女が、自宅にやって来た3人の警察官によって、子供たちの見ている前で逮捕されました。
その際、警察官は、彼女の写真を撮った上で指紋を採取し、携帯やノートパソコンなどを押収。
その後、スコットウは約7時間、拘置所で身柄を拘束されたのです。
この逮捕を招いた原因は、彼女のツイート。
スコットウは、あるトランスジェンダーの女性に対し、その人を「男性」とみなすツイートを発していました。
トランスジェンダーの人々にとって、自分の性別というのは、極めて重要なアイデンティティの一つ。
そのアイデンティティを真正面から否定されるというのは、重大な侮辱です。
逮捕されたのは、全くもって自業自得だと言えましょう。
3 100RTで犯罪実行
日頃からツイッターを利用している人の中には、とにかくバズりたくて仕方のない人がいます。
自分のツイートにどれくらいの人が「いいね」を付けたのか、何回リツイートされたのか、といったことが気になって仕方がない。
そういう人たちが、バズるためにあの手この手でツイートしまくるのは本人の勝手ですが、それも場合によっては逮捕につながります。
2014年、アメリカのロサンゼルスで、ダッカリ・マクアナフという20歳の男が、
「このツイートが100リツイートされたら、通行人を撃ってやる」
というツイートをしました。
文面だけからは、単なる悪ふざけとしか思えないですが、一緒に投稿された写真には、家の窓からライフルの銃口を歩道に向けている様子が。
日本でこのようなツイートがなされたら、それを見た大半の人は「どーせ合成写真か何かだろ」と思うでしょうが、アメリカの場合は本物の可能性が十分にありますから洒落になりません。
この危険なツイートの存在を知ったロサンゼルス市警は、ツイッターのアカウントからマクアナフの住所を特定し、程なくして彼を逮捕。
その後の調べで、写真に写っていたライフルはエアガンであり、彼は誰も撃ってはいないことが判明。
要するに悪質なイタズラだったわけですが、内容が内容だけに、逮捕されたのも無理はないという気がします。
4 おバカツイートで逮捕
おバカ極まりないツイートというのは、ツイートした本人としては大した悪意は無いのでしょうが、警察は必ずしも「悪意が無い」とは捉えません。
2016年、米国コネチカット州で、大統領選挙を控えたドナルド・トランプ氏の集会が行われていたとき、ショーン・モーキスという20歳の男が、次のようなおバカツイートをしました。
「トランプのいる会場を爆破しようって奴はいるか?それとも俺がやるべきかな」
さらに、自分の友人に対し、家族と一緒に今すぐ会場から離れろというツイートも。
もちろん、モーキスには本当に爆破しようなどという意思は毛頭ありませんでした。
二番目のツイートは、最初のツイートに信憑性を持たせようとしたのでしょうが、彼としてはちょっとバズりたい、くらいの気持ちだったはず。
しかし、これらのツイートを見たのが、大統領の警護を担うシークレット・サービス。
当然ながら、モーキスを待っていたのは、逮捕でした。
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5 発作を狙った悪質ツイート
攻撃的なツイートで問題になるのは、そのほとんどが侮蔑・中傷といった、言葉による暴力です。
しかし、時には意外な手段で相手を攻撃する者もいます。
2017年、『ニューズウィーク』誌のジャーナリストであるカート・アイヘンワリドという男性が、自己のアカウントに奇妙なツイートを受け取りました。
それは、「報いとしての発作だ」というメッセージで、その下には激しく明滅するアニメーションGIFが。
そのGIFを見た瞬間、彼は発作に襲われました。
実は、アイヘンワリド氏には、てんかんの症状があるのです。
その事実を知っているジョン・リベロというテキサス州ダラス在住の男が、意図的に発作を起こさせようとして上記のツイートを送っていました。
リベロは、自分と政治的な意見が合わないアイヘンワリド氏に対して嫌悪感を抱き、このような極めて悪質な方法を思いついたのです。
その後、アイヘンワリド氏の奥さんが警察に相談し、リベロは逮捕されました。
とりあえずこれで問題解決かと思いきや、アイヘンワリド氏の受難はまだ続きます。
この事実が報道されるや否や、リベロを真似たツイートを彼に送る者が約40人も現れたそうです。
逮捕を招いた行為だと分かっていながら、それを真似る連中が現れたことは、SNSの闇の深さを物語っていると言えるかも知れません。