ブラック企業
に採用されてしまったらどうなるか。
劣悪な環境で働かされ、プライベートの時間は消滅し、出勤の度に生命力が削られていく。
「働くために働くだけの人生」に慣れるために、人間としての感覚を鈍磨させなくてはおよそマトモな精神状態を保てない。
そんな毎日が延々と続きます。
しかし考えてみれば、ブラック企業でなくても、世界基準で見れば日本人の労働時間は異常。
「一日12時間労働?それって普通でしょ。むしろ少なくね?」
こんなセリフがごく自然である国で生きていくためには、過労と付き合っていくのは必至。
今回は、そんな過労にまつわる、誰も知りたくない真実を、お節介にもこの記事でご紹介します。
〈originally posted on March 22, 2022〉
1 働き過ぎの女性と糖尿病リスク
働き過ぎが健康にとって大きなリスクになりうるのは常識ですが、ちょっと常識ではない事実をご紹介しましょう。
実は、過労が招く危険度は、男女間で異なります。
カナダで12年に渡って約7000人の男女を対象に行われた研究によれば、週の労働時間が45時間超である女性と、30~40時間の女性とを比較すると、前者の方が、糖尿病になる確率が63%も上がるのです。
一方、男性の場合は、労働時間と糖尿病との間に相関関係は見られないのだとか。
男女間でこのような違いがあるのは驚きですが、同様の研究報告は他にもあります。
例えば、2016年にオハイオ州立大学で行われた研究でも、女性の方が過労による健康へのダメージが大きいという結論が出されています。
では、なぜ男女で差が生まれるのか。
その原因の一つは、ストレス。
我々は、過度のストレスを感じると、体内でコルチゾールというホルモンを分泌します。
このコルチゾールが増え過ぎてしまうと、体の様々な不調の要因になり、場合によっては糖尿病にも発展しうるのだとか。
女性の場合、仕事上のストレスに加え、家事、育児などによる心労がのしかかるため、男性よりも健康被害に繋がりやすいと考えられています。
2 一日の労働時間と脳卒中リスク
エナジードリンクや栄養ドリンクをガソリン代わりにして、毎日遅くまで残業し、ヘトヘトになって帰宅。
若いうちは、こういう生活を送っていても、あまり危機感を抱かない人が多いかもしれません。
しかし、そのしわ寄せは必ずやって来ます。
2019年にフランスの研究者が発表した論文によると、一日の労働時間が10時間を超える日が、年に50日以上ある人は、脳卒中になるリスクが約33%上がるそうです。
この結論は、144000人を対象にしたリサーチの結果得られたもの。
さらに、人によっては、このリスク上昇度が倍以上に。
長時間労働の生活を10年以上続けている人は、脳卒中のリスクが45%上がるという報告もあります。
3 働き過ぎの女性とうつ病
女性にとって働き過ぎが危険であることを示すデータをもう一つご紹介しましょう。
イギリスのロンドン大学クイーン・メアリー校で、2万人を対象に行われた研究によると、週に55時間以上働く女性は、週の労働時間が35~40時間の女性に比べ、うつ病の兆候の出やすさが7.3%も高いそうです。
さらに、週末を休み返上で仕事に当てている女性は、そうでない女性よりも、うつ病のなりやすさが4.6%高くなります。
そしてこの数値は、男性の場合よりも高いのです。
この差が生まれる原因も、先述のように、やはり多くの女性が強いられる家事・育児が原因だと見られています。
また、本当に自分がやりたい仕事ではないために、仕事に対する充足感の低い人ほど、うつ病になる傾向は高くなるのだとか。
4 幸せのカギは「5時で退社」
「アフター5」という言葉は、日本では一体全体何を意味するのか。
少なくとも、仕事が終わった後、という意味ではないでしょう。
朝から夕方までぶっ通しで働き、なおかつ5時からが「仕事本番」、という人も珍しくありませんから。
5時になった瞬間、「じゃ、お疲れ~」などと言って職場を後にできる人など果たして存在するのか……。
それはさておき、ある研究によれば、5時きっかりに仕事を終えて家路につく人ほど、幸せで健康的な人生を送ることができるそうです。
はい、言いたいことは分かります。
そんなこと、誰でも知っとるわい、と。
わざわざ研究するほどのことかい、と。
確かにそうなのですが、この研究では、面白い事実も明らかになっています。
職場で、「わたし、今日は5時ジャストに帰りますから」と宣言する人がいると、その職場の雰囲気にプラスの効果をもたらすそうです。
就業時間が5時までであっても、5時になった瞬間に帰り支度を始めるのはなかなか勇気が要るもの。
しかし、上記のような人がいると、周りにいる社員の「5時になっても帰りづらい……」という精神的負担が軽減され、たとえ5時に帰るわけではなくても、気持ちが少しラクになるのです。
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5 会社のメールからは逃れられない
一日の仕事を終えて帰宅した後は、とりあえず仕事のことは忘れて、ゆっくりしたいものです。
しかし、家にいるときも、ついつい会社からのメールをチェックしてしまう。
寝る前にもメールをチェックしておかないと、どことなく不安。
そして翌朝、起きたらまずはメールをチェック。
結局、家にいる間も、会社とのつながりが断てない。
こういう人は多いでしょう。
メールをチェックすること自体は「仕事」ではありませんから、こういった習慣があっても、大した問題では無いと思われるかもしれません。
しかしながら、アメリカのバージニア工科大学が行った研究によれば、会社からのメールをしょっちゅうチェックする習慣は、確実に健康へのダメージをもたらします。
家に仕事を持ち帰ることが、過度のストレスや、家庭内不和につながることは、以前から専門家により指摘されていました。
この研究では、それに加え、単に家で仕事のメールを見るだけでも、ストレスや不安、さらには、夫婦間での軋轢を生む原因となることが分かったのです。
スマホやパソコンのおかげで、何時どこにいても仕事上のやり取りが出来るのは確かに便利ですが、それは見方を変えれば、仕事とプライベートの境界線が無くなるということ。
仕事を終えても、寝ているとき以外、常に「緩い仕事モード」を維持しなければならない生活は、ブラック企業なみに危険度が高いといえるかもしれません。