人種や性別に基づく差別的な発言は、絶対に許されません。
公人はもとより、私人が軽い気持ちでツイートすることもアウトです。
では、容姿に基づく差別はどうか。
例えば、顔の良し悪し。
ブサイクをイジり倒すような番組は、数年前まで某ネットテレビ局で放送されていましたし、民放のバラエティ番組では、ブサイクな芸人をネタに笑いを取るのは日常茶飯事。
テレビに限って言えば、ブサイクに人権はあるのかという気がします。
しかし考えてみれば、人種や性別と同じく、顔の見た目も本人には(少なくとも整形しなければ)どうしようも無い要素。
それなのに、残念な顔をしているというだけで、容赦なく攻撃・嘲笑・侮蔑の対象にされてしまうのは何故なのか。
今までの人生で、恐らく数十万回はブサイクと言われてきた僕としては、大いに疑問に感じます。
そして、顔の見た目と同じく馬鹿にされやすいのが、低身長の男性。
これもまた、遺伝の影響が強いのに、背の低い男性は、それだけで不快な思いをすることがよくあります。
〈originally posted on February 28, 2022〉
1 背の低い男性は収入も低い?
見た目に恵まれた人は、人生において得をする場面が多いのは、誰もが経験的に知っています。
では、その「見た目」には、身長も含まれるのか。
アメリカのアイオワ大学で近年行われた研究によれば、身長と収入との間には、無視できない相関関係がありそうです。
具体的には、一定の年収以上の人々における身長と収入との関係を調べたところ、身長が1センチ上がるごとに、家計所得が1000ドル(約1万1000円)高くなることが分かりました。
ちなみに、これは男性限定の話。
では、女性はどうなのかと言うと、女性の場合は、肥満度を表すBMIの数値が1ポイント下がるごとに、家計所得が1000ドル高くなるのです。
端的に言えば、背の低い男性と、ぽっちゃり女性は、背の高い男性、スリムな女性に比べ、収入面で負ける傾向があるということ。
この結論の背景にあるのは、就職や昇進の場面における、容姿に対する差別だと考えられます。
もちろん、これはあくまで統計データから見た場合の結論であって、背の低い男性であっても仕事で成功を収めている人は数多くいます。
例えば、Amazonの創設者で、莫大な資産を持つジェフ・ベゾス氏は、身長が171センチしかなく、これはアメリカ人の平均から見ればかなり低い方です。
さらに、後述のように、これとは逆の結論となっている研究もあります。
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2 低身長の男性とマッチングアプリ
背の低い男と背の高い男。
モテるのはどっちだ!!!
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・(溜息)。
大方の人はもう既に分かっていることだと思うのですが、敢えてデータを示しましょう。
イギリスにおいて、マッチングアプリで成立したカップル8万組について、男性の身長がどのように影響しているのかが調査されたことがあります。
その結果、身長の高い男性ほど、女性から好意を持たれやすいということが明らかに。
はい、意外性ゼロです。
ちなみに、イギリス人女性にとって最も理想的な男性の身長は、6フィート(182センチ)。
この身長の男性は、イギリス人男性の平均である170センチの人よりも、マッチングアプリで女性に興味を持たれる割合が33%高いのです。
また、この数値は、身長が162センチ以下の男性と比較すると、77%になります。
身も蓋もないことを言えば、背の高い男はモテる、ということ。
では、男の身長は高ければ高いほどいいのかと言うと、そうでもありません。
高すぎるのはマズイようで、身長が192センチ以上になると、逆に女性から避けられてしまうそうです。
果てしなくどーでもいいことですが、筆者の身長は171センチ。
先程のジェフ・ベゾス氏と同じです。
つまり、僕とベゾス氏との共通点は、人間であるということと、身長だけです。
3 身長と冠動脈疾患との不気味な関係
2015年にイギリスのレスター大学で行われた研究によると、身長と心臓疾患との間には、何らかの関係性があるそうです。
この研究では、冠動脈疾患になったことのある人約6万5千人と、なったことの無い人12万8千人の情報が解析され、身長に影響する遺伝的要素が、冠動脈疾患にも影響しているのかが調べられました。
すると、身長が6.3センチ高くなるごとに、冠動脈疾患にかかるリスクが13.5%下がることが判明。
例えば、身長160センチの人と175センチの人を比較すれば、前者の方が冠動脈疾患になるリスクが32%高くなるのです。
ただし、これが当てはまるのは男性のみ。
それにしても、身長が15センチ違うだけで、心臓疾患のリスクが30%以上も違ってくるというのは、数字だけ見れば恐ろしい話。
しかし、研究者によれば、低身長の男性が心臓疾患を極度に恐れる必要はありません。
心臓疾患になる原因は、様々な要因が複雑に絡み合っており、遺伝的要素はその一つに過ぎないからです。
すなわち、普段の食生活や運動量、生活習慣などが与える影響の方が大きいのです。
4 「ナポレオン・コンプレックス」は実在するのか
ナポレオン・コンプレックスとは、1926年に精神分析学者のアルフレッド・アドラーによって定義された概念。
背の低い男性は、その劣等感をバネにして、自分の身長が足りないのを補うかのように、ときに攻撃的・権力的になるというもの。
ちなみに、ナポレオンは背が低かったと言われることが多いのですが、約170センチという彼の身長は、18世紀末期という時代では平均的だったとか。
問題は、このナポレオン・コンプレックスは、果たして本当に存在するのかということ。
これについては、実に100年近くもの間、学者の間でも意見が分かれてきました。
しかし、2018年にオランダのアムステルダム自由大学の研究チームが発表した論文によると、ナポレオン・コンプレックスは確かに実在するとのこと。
お金のやり取りが絡んだゲームを使った実験において、身長の低い男性ほど、より好戦的な態度に出ることが分かったのです。
また、アメリカのジョージア州アトランタの研究者達によると、身長が低いために、自分が男性的ではないと感じている人は、平均的な男性よりも、3倍も攻撃的な面があるそうです。
攻撃性がエスカレートすると、武器を使用することもあり、場合によっては自身が負傷する結果になるとか。
ある専門家は、「高身長でなければ男らしくない」というような社会の風潮が、低身長の男性たちを追い込み、彼らをより攻撃的・権力的にする面があると語っています。
確かに、「170センチ未満の男に人権は無い」などと言われたら、攻撃的になるのも無理はないかもしれません。
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5 低身長の男性との結婚は長続きする
ここまで、低身長の男たちの知られざる真実(一部、知られてる真実)をご紹介してきましたが、なんだかんだでネガティブな内容ばかり。
しかしここからが、身長の低い男たちの反撃です。
アメリカのニューヨーク大学で、5000世帯について、男性の身長がパートナーとの関係にどのような影響を与えているのかが調査されたことがあります。
それによると、低身長(約170センチ以下)の男性は、高身長の男性に比べ、婚期は遅い傾向にあるものの、一度結婚すれば、離婚率が32%も低かったのです。
つまり、女性にとっては、身長の低い男性をパートナーに選んだ方が、関係が長続きするということ。
その理由については、このリサーチを行った研究者たちも、はっきりとは分かっていないのだとか。
ただし、夫が家事を分担する割合が関係しているのではないかと見られています。
身長の低い男性は、家事に費やす時間が週平均で約8時間30分。
これは、平均的な身長の男性よりも約50分、高身長の男性よりも約60分多いのです。
このような違いを生む背景には、先述のナポレオン・コンプレックスが関係していると見る人もいます。
身長が低いことを穴埋めするため、家事も頑張り、仕事にも専念する。
その結果、最初にご紹介したアイオワ大学の研究結果とは逆に、収入面で高身長の男性に勝っている場合が多いのです。