「このクソッタレがあぁッ!!!」
いい年した大人が、人前でこんな風に怒鳴ってしまうと、
「あの人、気が短いからちょっと苦手……」
「些細なことで大声を出すなんて、まるで子供……」
などと周りから思われかねません。
良識と常識を兼ね備えた大人は、人前でむやみに罵言を吐いたりはしないもの。
一般的に、そういう認識があるように思います。
しかし、罵言を吐くことは、悪いことばかりではありません。
別の記事で既に書いてあるので、ここでは詳述しませんが、乱暴な言葉をよく使う人は、概して知能が高いという研究結果もあるのです。
もちろん、しょっちゅう汚い言葉を連発していては、人間性を疑われますが、適度な罵言は、それほど大きな問題ではないかも知れません。
〈originally posted on February 9,2020〉
1 罵言で肉体的にパワーアップ
イングランドにあるキール大学のリチャード・スティーブンス博士が行った研究によると、罵言を吐くことで、一時的に運動のパフォーマンスが上がるそうです
その研究では、約80人の被験者に対し、自分がいきなり頭を叩かれたと想定して、そのリアクションを言葉で表現してもらいました。
多くの被験者は、「クソッ!」「畜生!」のような言葉を発したのですが、それにより、彼らの体の副交感神経系が刺激されることが分かったのです。
副交感神経系は、例えば、人間が危機的状況に陥ったとき、心拍数を上げるといった働きを担っています。
スティーブンス博士によると、このことが、運動のパフォーマンスを上げることにつながったのではないか、とのこと。
よって、例えば、自転車で急な坂道を上るときのような、大きな力やスタミナが要求される場面で罵言を吐くと、体が少し軽く感じるかも知れません。
ただ、あまり大声を出すのは、近所迷惑なので止めた方がいいでしょうが……。
2 罵言で痛みを和らげる
先程のスティーブンス博士の研究では、罵言を吐くことで、痛みに耐える能力が若干上がることも分かっています。
夜、寝ている最中に、足がつって激痛が走ったりしたら、
「こんな時間に足つりやがって、ワレ舐めとんのかボケ、コラ、カス!!」
などと言えば、痛みが(ちょっとは)軽減されるはずです。
ただ、奥さん(または夫)が横で寝ているときにこんなことを言えば、夫婦仲に亀裂が入るかも知れません。
そこで、スティーブンス博士は、罵言のようで罵言でない言葉でも、同様の効果があるのかを試してみました。
例えば、「クソッタレ!」の代わりに「クロッカレ!」と言うように、罵言に近い言葉を作り、被験者にそれを言わせたのです。
その結果、「クソッタレ!」と言う場合よりも、痛みを和らげる効果は下がることが分かりました。
残念ながら、本気で痛みを和らげたいときは、やはり乱暴な言葉を使うしかないようです。
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3 罵言が多い人ほど正直者
イギリスにあるケンブリッジ大学のデイヴィッド・スティルウェル博士が、7万5千人のフェイスブック利用者につき、その言葉の使い方と「正直度」を調べる実験を行ったことがあります。
それによると、乱暴な言葉を多用する人ほど、正直な性格であるという結果が出ました。
また、これとは別の実験では、276人の被験者に、自分が罵言を吐くときに最も好む表現を書いてもらい、その後、彼らをウソ発見器にかけ、各人の正直度をチェック。
すると、より程度の強い罵言を好む人ほど、正直者であることが分かったのです。
スティルウェル博士の話では、日頃からよく罵言を吐く人は、自分の言語表現を、フィルターを通さずに発してしまうのですが、それと同様に、自分の意見もフィルターを通さずに発するのではないか、とのこと。
これが真実なら、言葉遣いの汚い人は、周りを不快にさせやすいという欠点はあるものの、正直者であるという意味では、むしろ付き合いやすい面があると言えるかも知れません。