凶悪事件が発生し、容疑者が逮捕されると、その人物の子供時代を知るためにマスコミが取材します。
同じ小学校に通っていた知人などに話を聞くと、犯人には小学生のころから少し変わったところがあった、という証言が得られることが少なくありません。
要するに、子供の頃から既にヤバかったわけです。
そして、子供を教育するのはもちろん親。
親の教育は本当に重要です。
しかも厄介なことに、子供を教育することには、気づきにくい危険も数多く存在します。
〈originally posted on August 20,2019〉
1 ヒーローを応援する無邪気な子供に注意
子供、特に男の子が好きなテレビ番組や映画のジャンルとして、ヒーロー物は外せないでしょう。
ヒーローが世のために戦う、分かりやすい勧善懲悪のストーリーは、正義を尊び悪を憎む精神を育むには最適。
しかし、ヒーロー物にばかり熱中する子供は、それはそれで問題があるかも知れません。
アメリカのペンシルベニア州立大学で行われたある研究で、2015年と2016年に公開されたヒーロー物映画10作品について、「ヒーロー」と「悪役」の行動を詳しく分析しました。
すると、1時間当たりの暴力的な行動の頻度は、悪役よりもヒーローの方が、約27%多かったのです。
研究に携わった一人であるロバート・オリンピア博士の話では、子供はヒーローを「善人」だと捉えているので、危険を犯して行動するシーンや、暴力で悪漢を打破するシーンなどに影響されやすいとのこと。
よって、子供がヒーロー物を観る際は、親も一緒に観て、ヒーローのそういった行動を子供が安易に真似しないように教えることが重要だと述べています。
確かに、ハリウッド映画に登場するヒーローたちは、クライマックスで敵を完膚なきまでに叩きのめします。
大人が観る分には痛快なシーンですが、子供に観せる場合はそれなりの配慮が必要ということでしょう。
ただ、ヒーローの暴力性が問題だとは言っても、さすがにアンパンマンの必殺技「アンパンチ」を問題視する必要は全く無いと思います。
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2 YouTubeにハマって太る子供たち
小学生の子供に親がスマホを与えるか否かを決めるのは、なかなか難しい判断が要求されます。
スマホを買い与えた途端、暇さえあればゲームをやって、学校の成績が急降下、などという可能性もあるでしょう。
SNSを通じてイジメの被害に遭うことも考えられます。
さらに、最近の研究では、スマホの悪影響は子供の肥満にも及ぶとされています。
では、スマホと肥満とどういう関係があるのか。
スマホばっかりいじっていて運動不足になる、ということも考えられますが、もっと意外な理由があるのです。
それは、YouTube。
イギリスのリヴァプール大学で行われたリサーチによると、YouTubeを頻繁に観る子供は、脂肪分や糖分の多い高カロリー食を摂る傾向が強く、太りやすくなります。
YouTuberは動画の中で物を食べることがよくありますが、そういった食べ物はジャンクフード系が多く、カロリーも高め。
ヘルシーな食事をしている動画は、大して面白くないからでしょう。
そして、YouTuberが色々な物を食べている様子は、生活感が滲み出ているので、食品を扱うテレビCMなどよりも子供に与える影響力が強いそうです。
その結果、人気YouTuberのチャンネルにハマっている子供は、そうでない子供に比べ、カロリー摂取量が26%も高いのだとか。
リサーチを行った研究者の一人であるエマ・ボイランド氏は、
「子供たちからの信頼を得ているYouTuberは、動画の影響力を考え、もっと責任感を持つべきだ」
と語っています。
3 バービー人形は一回遊んだだけで悪影響がある
世界一有名なファッションドールと言われている「バービー」は、今年でデビュー60周年を迎えたそうです。
半世紀以上も世界中の女性たちに愛され続けているというのは凄いの一言に尽きます。
小さな女の子にとっては、バービーは今でも人形の中でド定番なのでしょう。
バービー人形が偉大なのは疑いようが無いですが、残念ながら、当サイトが「バービーって凄い!」で終わるわけがありません。
5歳から8歳までの160人を対象に行った研究によれば、女の子がバービー人形で遊ぶと、細い体こそが理想的な体型であるという意識が刷り込まれてしまうのだとか。
しかも、毎日のようにバービー人形で遊ぶ子供だけでなく、たった一回遊んだ子供にもこのような影響が現れるそうです。
オーストラリアのフリンダース大学名誉教授であるマリカ・ティゲマン氏は、子供がバービー人形で遊ぶと、人形の細すぎる体型のインパクトを受け、痩せていることが重要なのだと認識してしまうと語っています。
よって、親はなるべく別の人形を子供に与えるべきである、と。
この結論に対し、バービーの製造元であるマテル社は反論として、時代の流れとともに、単に細いだけではない人形も販売しているとコメントしています。
4 嘘が上手い子供を強く叱る必要は無い
自分の子供が言いつけを守らなかったとき、親はとりあえず「何で言うこと聞かないの?」と理由を尋ねるでしょう。
それに対し、素直に謝る子もいれば、バレバレの嘘でもって言い訳をする子もいます。
多くの親は、前者の方を「良い子」であると考えるはず。
しかし、後者のような、嘘をつく子が駄目な子であるとは限りません。
イギリスにあるシェフィールド大学のエレナ・ホイカ博士によると、嘘をつくのが上手い子供ほど、思考能力に優れ、言語に関する記憶力が高い傾向が見られるそうです。
この結論は、6歳から7歳の144人の子供を対象に行った実験で得られたもの。
上手い嘘をつくためには、相手がどう考えているのかを予想しつつ、こちらの嘘がバレないように複数の情報を効果的に組み合わせる必要があります。
こういった作業は、子供の脳にとってはかなり複雑なプロセス。
よって、嘘が上手いことは、脳力の高さを示してもいるのです。
そうであれば、あまり強く叱る必要は無いでしょう。
間違っても、体罰を与えたりしてはいけません。
何故なら……。
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5 子供を引っぱたくと、なおさら言うことを聞かない子に育つ
改正児童虐待防止法において子供への体罰禁止が明記されたことから、民法で定められた「懲戒権」をどうすべきかが議論されています。
これについては、子育て中の親の間でも見解が分かれるところでしょう。
殴る蹴るなどはどう考えても許されませんが、平手打ちくらいならしつけの範囲内だと考える親もいるかもしれません。
しかし、平手打ちも避けるべきだと思わせる研究があります。
テキサス大学のエリザベス・ガーショフ教授の主導で行われたこの研究は、50年以上に渡って160000人を超える子供達を分析したものですから、その説得力は相当なもの。
それによれば、平手打ちで体罰を受けた子供は、成長するにつれて精神的な問題を抱えたり、反社会的な思考を持ったりする可能性が高いのだとか。
また、平手打ちされた子は、一時的には従順になるものの、時間が経つとより反抗的・攻撃的になり、完全に逆効果になってしまうとのこと。
別のリサーチでは、こういった体罰は、子供の知能指数の低さとの相関性があるという報告もあります。
ただし、平手打ちによる悪影響は、原因と結果が逆という可能性も残されています。
つまり、もともと反抗的・攻撃的な要素を持っている子供ほど親に叩かれやすいのではないかということ。
しかし、平手打ちの頻度が減少すると、子供の問題行動が減ると予想されることも、ガーショフ教授のリサーチから明らかになっています。
これは、親だけでなく学校教師にも言えることですが、暴力によるしつけは、たとえ一定の教育的効果があるとしても、副作用が大きいと考えるべきでしょう。