食べすぎや飲みすぎ、といったことが体に悪いのは、誰でも知っています。
社会人なら働きすぎにも要注意でしょう。
体を壊してしまったら元も子もありません。
学生であれば、テレビの見すぎやゲームのやりすぎなどは、駄目だと分かっていても、その誘惑に勝つのが難しいところ。
日常生活には、やりすぎるとマズイものが山ほどありますが、それらのほとんどについて、我々は体験的に把握しています。
しかし、度が過ぎると厄介な問題が生ずるものの中には、特に何の害も無さそうなものもあるのです。
今回は、日常に潜む知られざるキケン要素をご紹介します。
〈originally posted on August 7,2019〉
1 作り笑いをしすぎると精神的ダメージがある
普段から笑顔でいることが多く、明るい印象を周りに与える人もいれば、「そういえば10年以上笑っていない(実話)」という変わった人間もいます。
後者のような、本心から笑えない人であっても、適当に愛想笑いや作り笑いをせねば社会でやっていけません。
しかし、作り笑いを頻繁にしすぎると、ただでさえ笑いの無い毎日をさらに暗いものにすることになりかねないのです。
香港科技大学で行われた実験によれば、気分が晴れないときなどに、自分の感情に反して無理に笑顔を作ることを繰り返していると、笑う度に気分が沈むようになる可能性があるのだとか。
楽しくない現状を自覚しつつ敢えて笑うことを繰り返していると、笑う度に、実は全く楽しくないという現実を強く意識するはめになるのです。
その結果、気分がかえって落ち込むというわけ。
一方、楽しいから笑うという、人としてごく当たり前のことが出来る人は、いくら笑っても何の問題もありません。
どんどん笑いましょう。
逆に、自然に笑えない人は、無理に笑う必要はありません。
そんなことをするよりも、笑えない原因を何とかする方が先です。
【スポンサーリンク】
2 睡眠時間が長すぎると死亡率が上がる
諸外国と比べ、日本人の平均睡眠時間が短いのはよく知られています。
最適な睡眠時間というのは人によって差があるそうなのですが、短すぎると体調不良などを引き起こしかねないのは明らか。
では、睡眠のための時間が十二分に取れる人は、できるだけ長時間寝る方が健康に良いのか。
実はそうでもないらしいという研究結果があります。
イギリスのキール大学やマンチェスター大学で行われた研究によると、長すぎる睡眠時間は死亡のリスクを高める可能性があるそうです。
具体的には、一日9時間以上寝る人は、それだけで死亡率が25%上がり、10時間以上寝る人は、心臓発作や心臓疾患で亡くなる確率が、50%前後上がります。
睡眠不足が続く生活も問題がありますが、あまりに長く寝続けるのも、健康的とは言えないようです。
大事なのは、自分にとって最適な睡眠時間に従って、毎日規則的な就寝・起床を心がけるということでしょう。
3 幸せすぎると心筋症の危険度が上がる
高齢者が、自分の人生が激変するほどの悲しい出来事、例えば、最愛の人や家族を失ったりした場合、ショックのあまり心筋症になり、それがもとで死亡する例はこれまでに多数確認されています。
では、それとは逆に、最高に嬉しい出来事、例えば、孫の誕生などによって、幸せすぎて心筋症になる場合はあるのか。
スイスのチューリッヒ大学病院での研究によると、割合的には少ないものの、これは十分ありうる話なのだとか。
この現象は「ハッピー・ハート症候群」などとも呼ばれ、嬉しすぎる出来事が引き金になって心筋症を招きます。
ということは、悲しい事であろうと嬉しい事であろうと、感情を強く揺さぶられるような出来事は、高齢者にとって心筋症を引き起こす一定の危険性があるということ。
また、同大学病院のデータによると、どちらのパターンにしても、このようなケースで心筋症にかかる患者の95%を女性が占めています。
年齢的に見ると、悲しい事で心筋症になった人の平均年齢は65歳、嬉しい事の場合が71歳です。
悲しい知らせはもちろんですが、嬉しい知らせであっても、心臓の弱い高齢者に伝えるときには注意が必要なのかも知れません。
そう考えると、例え嬉しい知らせであっても、サプライズの形で高齢者に伝えるのは避けるべきでしょう。
4 座っている時間が長すぎると記憶力が下がる
朝から晩まで座りっぱなしのデスクワークをすることは、明らかに健康によろしくありません。
首や肩が凝ったり、脚がむくんだりして、仕事の疲労感も増します。
しかし、座りっぱなしの恐ろしさはそれだけにとどまりません。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によると、長時間座り続けることは、記憶力に悪影響を与える可能性があります。
中高年の人たちを対象に行った調査で、長時間座りっぱなしでいることと、大脳の側頭葉内側部が薄くなることの間に相関性が認められました。
側頭葉内側部は、新たな情報を記憶する能力に関わっており、この部位の体積が減ることは、認識能力の低下や認知症にも関連があるとされています。
座っている時間が長くなると、心臓病や糖尿病などにかかるリスクを高めることは、以前から指摘されていました。
それに加え、記憶力低下との関連があるということも明らかになったのです。
ただし、この研究で分かったのは、長時間座ることと記憶力低下との間に相関性があるということだけであって、座っているだけで記憶力が低下するということではありません。
ちなみに、長時間の座り仕事を終えた後に、ジムなどで体を動かして汗を流しても、この悪影響をチャラにするのは困難なのだそうです。
【スポンサーリンク】
5 楽観的すぎるとかえって気分が沈む
物事を何でも悲観的に捉える人と、楽観的に捉える人とでは、後者の方がストレスが溜まらず、気楽に生きていけるような気がします。
しかしながら、楽観主義の人は必ずしも気楽な人生を送るわけではないということを、ニューヨーク大学のゲイブリエル・エッチンゲン教授が発見しました。
何か嫌な事があったとき、それを極力ポジティブに捉えることで、我々は気持ちがラクになり、その場に停滞せず前へ進むことが出来ます。
この点だけに着目すれば、やはりポジティブな態度でいる方が良いのだと思いたくなりますが、同教授によると、何事もポジティブに考えすぎる人は、時間が経てば経つほどネガティブな気分になりやすいのだとか。
その理由の一つとして考えられているのは、今置かれている状況を変えるために本人がどれくらい努力をするか、という点です。
どんな状況であってもそれを肯定的に捉える人は、その状況を変えようとする努力をあまりしません。
その結果、時間が経つにつれて、状況改善のための努力を怠ったツケが回ってくることになり、後悔や自責などのネガティブな感情が生まれるのです。
エッチンゲン教授の話によれば、物事をポジティブに捉えること自体は決して悪いことではありません。
ただ、出来事のあらゆる側面を肯定的にしか捉えないでいると、いずれはそのしわ寄せが来ます。
逆に言えば、物事をネガティブに捉えるのは悪いことばかりではないということ。
自分が置かれている状況のマイナス面をしっかり認識した上で、乗り越えねばならない課題のために努力をする。
こういう生き方は、決してラクではありませんけれども、長い目で見ればむしろ前向きな生き方と言えるかも知れません。
一つだけ確かなのは、落ち込んでいる相手に対するアドバイスとして、
「何でもポジティブに考えればきっと上手く行くんだYO!」
などというのは、避けた方が良いとういことでしょう。