現代人で本当に良かった。
現代サイコー。
今の政治に何の不満も無いという人はまずいないでしょう。
しかし、国に対してどれだけ不満があろうとも、100年前、200年前の時代に生きるのに比べれば、我々は遥かにマシな生活を送っていると言えるかもしれません。
そう思いたくなるほど、過去の時代の生活には悲惨な面がありました。
なお、「悲惨」と言っても、今回の記事のテーマには、戦争やそれに関する事柄は含まれていません。
残念ながら戦争は、昔の人々「だけ」の問題ではありませんから……(なんちて)。
〈originally posted on August 1,2018〉
1 醜い人には罰金
は、そうでない人よりも辛い体験をする可能性が高いのは、今も昔も変わりません。
ただ、どんなにブサイクであろうと、それだけで犯罪者扱いされることは無いでしょう。
しかし、今から100年以上前のアメリカでは、多くの大都市において、見た目が醜い人には罰金が課されていました。
例えばシカゴでは、1881年に市会議員のジェイムズ・ピーヴェイが主導して制定された条例により、周りに強い不快感を与えるような外見をしている人は、最高で50ドルの罰金を徴収されることがありました。
「不快感を与える外見」とは、具体的には、病気や怪我、手術などが原因で、明らかに普通とは異なる特徴を備えた外見のことです(単なるブサイクはギリセーフ?)。
数十ドル程度の罰金と言えど、当時の貨幣価値を考えると気軽に払える額ではありません。
条例に引っかかるような外見をしていて、なおかつお金を払う余裕の無い人はどうしていたのかというと、人目に触れないように救貧院などの施設に身を寄せていたのです。
外見だけでここまで露骨な差別があるのは、酷い時代と言わざるをえませんが、第一次世界大戦が終わり、腕や脚を失った軍人たちが帰国すると、世間の見方も変わり、「醜い人」を取り巻く状況も変化していきました。
ただし、こういった条例自体はその後も効力を保ち、例えば先のシカゴの場合、問題の条例が正式に廃止となったのは、1974年になってからです。
【スポンサーリンク】
2 夫に逆らう妻は病院送り
今の時代に、妻は夫に対して常に従順であるべきだ、などという世迷言を口にしたら、周りの人から、お前は一体いつの時代の人間だという目で見られるのは間違いないでしょう。
現代の価値観からはズレまくっていますが、しかしかつての日本ではこういう考え方が支配的でしたし、それは海外でも同じこと。
特に、19世紀半ばのアメリカでは、「従順な妻」でいることが、人生を左右するほどの大問題でした。
当時の既婚女性は、夫の指示を忠実に守り、子供の世話や家事を黙々とこなすことが理想とされたのです。
家庭のことについて全ての決定権を持つのは夫のみ。
妻はそれに従うだけです。
今の常識で考えれば、いつ離婚してもおかしくないような結婚生活。
ところが、当時の離婚率はかなり低かったとされています。
その理由は、実に恐ろしいものでした。
夫に逆らうような妻は、その夫から精神を病んでいるとみなされ、離婚手続きを経ることもなく精神病院へと強制的に送られたのです。
健康面で何の問題も無い彼女たちを病院で待っていたのは、治療ではなく、人間以下の扱いを受ける劣悪な環境。
収容された人の多くは満足な食事も与えられず、ガリガリに痩せこけていきました。
皮肉なことに、精神病院での生活を続けるうちに、元々は正常だった精神がおかしくなっていく人が大半を占めていたと言われています。
3 タバコは健康に良いと信じていた人たち
タバコの煙の成分は、60種以上の発がん性物質を含む9000種以上もの化学物質です。
健康によろしくないのは明らかですから、世界各国のタバコのパッケージには必ず健康被害に関する警告文が表示されています。
しかし、今から100年以上前にまで時代を遡ると、むしろタバコは健康に良いと宣伝されることもありました。
例えば、アメリカの或るタバコメーカーは、パッケージの表面に、「喘息、花粉症、口臭、喉の痛み」などに効果があると堂々と表記していたのです。
また、別のメーカーの広告には、タバコは一杯の水と同じくらい安全だというような、(自称)専門家によるコメントが掲載されていることもありました。
医者や専門家でさえタバコは安全だと言っている、という必死のアピールは、タバコの健康被害に人々が感づき始めた20世紀初頭から増え始め、1960年代に入っても続きました。
そして、医者が太鼓判を押しているのだから問題無かろうと思ってタバコを毎日吸っていた人に、残酷な現実が訪れます。
アメリカの公衆衛生局長官が、タバコは有害であることを公式に発表したのです。
タバコが喘息に効くだの、水と同じくらい安全だのと言われていたのが全て嘘っぱちであったことを知った人たちの中には、当然ながら既にヘビースモーカーとなっている人もいました。
そういう人たちにとっては正に絶望的な知らせとなったことでしょう。
4 決闘で男子力アップ
「女子力アップ」の方法には、メイクやファッションなどがありますが、それに比べると、「男子力アップ」というのはイマイチ分かりにくい面があります。
とりあえず思いつくのは筋トレくらいでしょうか。
筋トレであれば、普段から実践するのはさほど難しくありませんが、しかし、20世紀初頭のドイツでは、筋トレなど比較にならないほど過酷な男子力アップ法が存在しました。
それは、決闘によって顔に傷を作ること。
激しい戦いの末に負った傷は「名誉の勲章」であり、傷の程度が重ければ重いほど、その人は一目置かれていたのです。
当時のドイツでは、決闘を行うことは合法であったため、男としてのランクを高めたい大学生たちは、剣を握り締めて果敢に戦いに挑みました。
その目的は、決闘に勝利することではなく、あくまで傷を作ることです。
熾烈な剣戟を思わせるような深い傷は、単なる「男子力アップ」にとどまらず、就職の際にも有利に働きました。
では、決闘を行うだけの勇気が無い男子はどうしていたのか。
そういう人たちは、ナイフを使って自分で傷を作り、馬の硬い毛で傷口を擦って、傷を意図的に悪化させていたのです。
それを行う度胸も無い人は、医師に金を払って、自分の頬の肉を削ぎ取ってもらっていたそうです。
5 命がけのトイレ
日本の便器は、世界に類を見ないほど進化を続けています。
今の温水洗浄トイレは、もはやお尻を温水で洗うだけではなく、便ふたの自動開閉、便器内の脱臭、ノズルの自動洗浄などが当たり前になってきました。
こういうハイテク便器を使うのに慣れてしまうと、今より遥か昔のトイレ事情は、狂っているとしか思えないでしょう。
例えば、古代ローマにおける公衆トイレは、文字通り公衆の面前で用を足すトイレでした。
小さな穴の開いた箱のような便器が、広場にズラリと50個前後並べられ、人々はそこで排便していたのです。
間仕切りも何も無いので、他人からは丸見えです。
お尻を拭くのはトイレットペーパーではなく、棒の先にスポンジが付いたものを使っていました。
しかも共用なので、スポンジにはバイ菌や病原菌が満載。
また、排水管がU字になっていないので、排便の最中に便器の中から昆虫がゾロゾロ這い出してくることも珍しくなかったとか。
そして、古代ローマの公衆トイレを利用する上で最も恐ろしいのは、夜中に用を足すときです。
排水管の中にはメタンガスが充満しているので、ランプの炎が引火して爆発を起こす危険がありました。
命がけの脱糞を成功させるべく、当時の人々は、トイレの近くの壁に、まじないとして呪文を書くこともあったようです。
【スポンサーリンク】
6 悪夢のクリスマス
年に一度のクリスマスくらいは、恋人と一緒にのんびり過ごしたいと思っている人は多いはず。
しかし、たとえそれが無理でも、街を歩いていれば、イルミネーションに彩られた、クリスマス特有の何とも言えない平和的な雰囲気を味わうことは可能です。
やはりクリスマスは平和でなくてはなりません。
酒に酔っ払った若者が、徒党を組んでストリートで暴れだし、爆発物を放り投げ、銃をぶっ放し、車道をブロックで封鎖した挙げ句、耳をつんざく騒音を立てながら街全体をカオス状態にしていくようなクリスマスでは駄目なのです。
しかしながら、そんな悪夢のようなクリスマスが実際に毎年繰り返されていたのが、19世紀半ばのアメリカ。
クリスマスになると街が戦場と化すのを知っていた当時のアメリカ人は、クリスマスを楽しみにする人よりも、不安を抱く人の方が多かったとか。
手が付けられないほど暴れ狂う若者たちに、誰かが抗議でもしようものなら、逆に鬼の制裁が待っています。
家の中にいれば安全かといえば、そうでもありません。
飲み屋を渡り歩く若者が、聞くに耐えないような酷い音楽をトランペットなどで演奏していたので、屋内でさえ平穏は無いのです。
しかも、そういった連中は、店でタダ酒を要求し、拒否されると店主をサンドバッグにしていました。
もちろん、警察も出動するのですが、騒ぎを収めるにはほとんど無力で、暴徒から反撃に遭うこともよくあったとか。
この当時のクリスマスに比べれば、恋人のいないクリスマスや、仕事だけで終わるクリスマスなどは、落胆するに値しないかもしれません。