鵜呑みにすると色々と問題がありそうな、怪しい統計の数々をご紹介します。
1 殴る女、吹っ飛ぶ男
2010年、男性の人権擁護のために活動するイギリスの団体が、気になる調査結果を発表しました。
英国内務省および英国犯罪調査の統計によると、2004年から2009年にかけてイギリス国内で発生した家庭内暴力(DV)において、男性の被害者は全体の40%(多い年では50%近く)を占めていたというのです。
家庭内暴力といえば、夫・彼氏から妻・彼女に対する暴力の方が圧倒的に多いイメージがありますが、この結果が正しいとすると、そういう認識を改めねばならないことになります。
しかし、実際に暴行を受けて重傷を負わされたりするのは、やはり女性の方が多いのが現実。
この統計、どうも怪しい…。
そう考えた人たちが、この統計の取り方を改めて調べてみると、興味深い事実が判明しました。
統計で使われたデータの中で、男性の被害者はたった一度暴力を振るわれたケースがほとんどなのに対し、女性の場合は長年にわたって何度も暴行を受けたケースが多かったのです。
さらに、男性の場合には、同性愛者のパートナーからの暴行も含まれていました。
このような事実を踏まえたうえで、4回以上暴力を振るわれたケースに絞ってみると、女性の被害者が全体の約90%を占めるという結果になったのです。
【スポンサーリンク】
2 銃規制は逆効果(?)
アメリカとイギリスは、いずれも犯罪発生率が高いことで有名ですが、もちろん両国にはいくつかの違いがあります。
たとえば、イギリスに比べるとアメリカは銃規制が緩く、殺人事件の発生率が高いのです。
このことから、どちらかと言えばアメリカの方が危険な国であるという認識が一般的といえるでしょう。
ところが、2009年、『ザ・テレグラフ』という雑誌がそれとは真逆の記事を掲載しました。
イギリスの方がアメリカより5倍も危険度が高いと結論づけたのです。
人口10万人あたりで比較すると、ある年における米国FBIの報告書によれば、アメリカでは403件の暴力事件が発生しているのに対し、英国内務省の報告によればイギリスでは1797件となっていました。
このことは、イギリスにおける厳しい銃規制が、逆に犯罪率を押し上げる結果につながっているという主張を生むことに。
しかし、実はこの統計にも「裏」があったのです。
イギリスの統計では、相手に暴言を吐いたような場合でも「暴力事件」に含めていたのに対し、アメリカではその程度では暴力事件に該当していませんでした。
つまり、イギリスの方が「暴力事件」の定義がかなり広いのです。
よって、これらの数値はそもそも比較すること自体が不適切だったということになります。
3 朝食を食べて成績アップ(?)
統計を鵜呑みにするのが危険であることを示す有名な例として「朝食と成績の関係」があります。
ある学校が統計をとってみたところ、毎日しっかり朝食を食べる生徒は成績が良い傾向にあったのです。
このことから、朝食を食べることで脳の働きが活発になり、授業内容がよく頭に入る結果、成績アップにつながっている、などと主張されました。
しかし、アメリカで行われた研究によると、朝食を食べること自体は、普段の成績に直接的な影響を与えていませんでした。
朝食を食べる習慣と成績との間には確かに一定の関連性はあるのですが、「原因と結果」の関係ではないのです。
結局のところ、朝食をまったく摂らない子供は、その状況を作っている原因(夜中までゲームで遊んでいて、朝起きるのが遅いなど)によって成績が上がらないだけでした。
4 有罪率99.9%の恐ろしい国
日本の刑事裁判で有罪判決が下される割合は99.9%である、というのはよく知られています。
あまり知られていない事実として、このことは海外のメディアでときどき「ネタ」にされているのです。
日本は裁判にかけられただけで有罪になるトンデモナイ国である、と。
しかし、有罪率が高いという点だけに着目して、滅茶苦茶な裁判が行われているかのように捉えるのは甚だ疑問です。
ご存知のように、日本では起訴する権限を持つのは検察官のみで、起訴が行われないかぎり裁判は始まりません。
さらに、検察官が起訴するのは、確実に有罪にできると考えられる場合のみです。
となると、有罪率が極めて高いのも、ある意味当たり前と言えましょう。
そして重要なのは、有罪率が高いということは、無実の可能性の高い人が刑事裁判に巻き込まれていないということ。
極端な話、有罪率が30%しか無ければ、残りの70%の被告人は、何もやっていないのに裁判に付き合わされているのです。
裁判が始まるとほとんどの場合、被告人のそれまでの生活は失われてしまいます。
そう考えると、有罪率が高いのは人権保護に寄与している面があると言えるでしょう。
もっとも、それはあくまで検察官が適切な判断を行っていれば、の話ですが…。
【スポンサーリンク】
5 男と女の自殺事情
多くの国において、自殺で亡くなる人の数は女性よりも男性の方が上です。
イギリスでは、自殺で死亡する男性の数は、女性の場合の3.5倍。
アメリカでは、自殺による死亡件数の約8割に男性が含まれています。
こういうことを書くと、「オトコは何だかんだ言って精神面が弱いからね。女の方がはるかに強いよ」という声が聞こえてきそうです。
女性の方が強いという主張に異論はありませんが、男女の自殺率に関しては、やや意外な報告があります。
アメリカで行われたある調査によると、一生涯において自殺を図る人の割合は、男性が4%だったのに対し、女性は7%でした。
つまり、自殺行動に走る人の数は、女性の方が多いのです。
では、自殺で死亡するのは、なぜ男性の方が多いのか。
その原因は、自殺の手段にありました。
アメリカの場合、女性は錠剤を使うことが多い一方で、男性は一般的に短銃やロープを使います。
そして、前者は致死率が低いのに対し、後者はほぼ100%の成功率です。
もちろん、国によってはこのような食い違いが現れない場合もあるでしょうが、少なくとも「自殺率」という数字だけでは見えてこない部分もあると考えてよさそうです。
一体なぜそんな統計があるのか…。 どこまで信用してよいのか判断しづらい珍しい統計をご紹介します。
6 「99%正確な検査」に隠された罠
例えば、「X病」という架空の病気について、次のような統計的事実を仮定してみましょう。
ではここで、花子という女性がそのX病にかかっているとします。
花子に関する情報はそれ以外なにも無いとすると、彼女が喫煙者である確率はどれくらいか。
直感的に考えて、少なくとも50%よりは上という印象を持つ人が多いのではないでしょうか。
しかしながら、これは誤りです。
平成26年の厚生労働省の報告によれば、女性の喫煙率は8.5%となっていますが、ここは計算を簡単にするためにそれを10%とし、さらに、女性100人のグループだけで考えましょう。
そうすると、このグループ内にいる喫煙者は10人、非喫煙者は90人です。
仮に、喫煙者10人のうちの3人、すなわち30%がX病にかかっているとします。
この割合が、非喫煙者では3分の1の10%になるわけですから、非喫煙者90人のうち9人がX病にかかっていることになります。
よって、このグループ内におけるX病患者の合計は12人。
そのうち喫煙者は3人。
ということは、花子がX病にかかっていると分かった場合、彼女が喫煙者である確率は12分の3、すなわち25%です。
意外なほどに低い数値です。
では、実際の割合よりもかなり多いイメージを持ってしまう理由は何なのか。
それは、「タバコを吸う女性は、吸わない女性よりもX病に3倍かかりやすい」という特殊な情報に注目するあまり、そもそも女性の中で喫煙者が何パーセントいるのかという情報を我々が無視してしまいがちだからです。
99%正確な検査
同じ理屈で、我々が勘違いしやすい現象がもう一つあります。
先ほどと同様に、「Y病」という架空の病気を設定します。
そして、太郎という男性が、Y病にかかっているかどうかを医師に検査してもらったとしましょう。
検査の結果、太郎はY病であると診断されます。
そして、トドメを刺すかのように医師がこう言い放ちます。
だから潔く諦めなさい、とでも言わんばかり。
しかしこのことは、「太郎が99%の確率でY病にかかっている」ことを意味しません。
何故なら、そもそも何パーセントの人がY病を患っているのかという重要な基礎情報が抜けているからです。
また、「99%の正確さ」ということは、逆に言えば「1%の不正確さ(=誤診)」であることも忘れてはいけません。
仮に、Y病の有病率が5千人に1人の割合だとします。
この検査を50万人に行ったとすると、その中でY病の患者は100人(このうち、検査によりY病であると正しく診断されるのは99人)。
「1%の誤診」を受けてしまう人の数は5千人(このうち、Y病でないのにY病であると誤診されるのは4999人)。
少々ややこしくなってきましたが、まとめるとこうです。
検査の結果、Y病にかかっていると医師が診断する人の数=5098(4999+99)。
このうち、本当にY病にかかっている人の数=99。
よって、医師からY病であると診断された場合、自分がY病にかかっている確率は…。
約1.94%
というわけで、2%にも満たないのです。
【スポンサーリンク】