刑務所で実験、というと、何やら恐ろしい雰囲気が漂います。
実際、アメリカなどの刑務所で行われていた実験には、そういったものも珍しくありません。
今回は、かつて刑務所内で実際に行われていた奇怪な実験の数々をご紹介します。
今の常識からは少し想像しにくいですが、昔は囚人の人権が蔑ろにされることが珍しくありませんでした。
立場が弱いこともあり、極めて危険な実験に利用されることもあったのです。
〈originally posted on December 11,2015〉
1 洗脳実験
場所:米国
時期:1953-1973
かつてアメリカのCIAは、
「マインド・コントロール」
を実現するための薬を研究し、その効果を確かめる実験を行っていました。
被験者としてターゲットにされたのは、立場的に歯向かわないであろう囚人たち。
合計3ヶ所の刑務所から、数百人がこの実験に参加し、中には「見返り」として、ドラッグをもらっていた囚人もいたとか。
実験は、被験者の精神状態を変えることを主な目的としており、その手段として使用されたのは、LSDや、催眠術、隔離、拷問などでした。
2 放射線病実験
場所:米国
時期:1963
ワシントン大学の研究員たちは、放射線が精巣の機能に与える影響を調べるため、232人の囚人を実験的に被曝させたとされています。
そして、刑期を終えた彼らに子供が生まれたとき、その子供についてのデータも収集していました。
その結果、実験を受けた者から生まれた子供の内、少なくとも4人に、実験が原因と見られる障害が確認されたそうです。
また、奇妙なことに、この実験によって囚人たちの体にどのような影響があったのかは調査されておらず、全ては謎のままなのです。
3 ダイオキシン実験
場所:米国ホームズバーグ刑務所
時期:1951-1974
ホームズバーグ刑務所では、20年以上にも渡って、ある極秘実験に数千人の囚人が参加していました。
この大規模な実験に投資していたのは、製薬会社や、軍部、CIAなど。
実験を仕切っていたのはアルバート・M・クリグマン医師で、表面的には「皮膚」に関する研究を装っていたようです。
しかしながら、実際に行われていたのは、精神に作用する薬物や、感染病、有毒物質などに関する実験でした。
ある実験では、ベトナム戦争でも使用された「枯れ葉剤」の成分である「ダイオキシン」を囚人に投与していました。
その結果、その囚人たちの顔や脇の下、股間などが突発的に病変したそうです。
実験終了後も数年間、彼らは後遺症に苦しむことになりました。
4 がん細胞実験
場所:米国オハイオ州立刑務所
時期:1956
チェスター・M・サウサムという医師は、53人の囚人に、生きた「がん細胞」を注入していました。
これは、がん細胞の感染性の有無を調べるために行われたもの。
この危険すぎる実験は、最初はがん患者を対象に行っていましたが、後に囚人を被験者として利用するようになしました。
その理由は、がん細胞が、健康な体の中でどのように振る舞うかを確かめるためでした。
この実験の結果、がん細胞を投与された囚人の体には腫瘍が出来たのですが、彼らは元々健康な体であるため、その免疫システムによってがん細胞は無くなったそうです。
5 マラリア実験
場所:米国ステートヴィル刑務所
時期:1940-1970
この刑務所では、約30年もの間、囚人たちは意図的に「マラリア」に感染させられていました。
その目的は、マラリアに対する有効な治療薬を、軍のために研究・開発するため。
囚人たちは、マラリア原虫を媒介する蚊に10回ほど噛まれるのですが、その後は高熱、頭痛、吐き気などが待っていました。
彼らには研究段階の治療薬が投与されましたが、治るどころか場合によってはマラリアの症状が悪化し、心不全を起こす者もあったとか。
また、第二次世界大戦後に開かれた「ニュルンベルク裁判」において、ナチスは自分たちが行っていた刑務所内での研究を正当化すべく、このステートヴィル刑務所の実験を引き合いに出したとされています。
6 梅毒実験
場所:グアテマラ
時期:1946-1948
アメリカ人医師たちの手で、囚人たちを意図的に梅毒に感染させるということが行われていました。
その目的は、梅毒に対するペニシリンの効果を研究するため。
しかし、囚人たちはこの実験について何も聞かされてはおらず、自分が病気に感染させられているという意識も無かったのです。
この実験の結果、囚人たちの中には心臓疾患に苦しむ者や、気が触れてしまう者などが出たようです。
しかも、感染者のうち、辛うじて治療を施されたのは約半数のみでした。
2010年にこの残忍な実験の事実が明らかになると、当時グアテマラの大統領だったアルバロ・コロン氏は、
「非人道的な犯罪である」
として強く非難しました。
7 毒薬実験
場所:ソビエト連邦
時期:1921~
20世紀を通して、ソ連は様々な毒物を使った実験に囚人を利用していました。
その目的は、味も匂いも全く無く、それ故に検死で発見される可能性の無い化学物質を作るため。
それらの毒物には、マスタードガスや、シアン化物、リシンなどがあり、食事などに混ぜて囚人に提供されていました。
この実験の結果、服用してから15分位内に死に至る、「C-2」という毒薬が完成したとされています。