ネットで調べ物、と言えば、やはりグーグル。
しかし、欲しい情報の範囲が決まっている場合、直接ウィキペディアで検索した方が簡便なことも多くあります。
膨大な情報が蓄積されたこのサイトが、無料で使えるのは非常にありがたい話。
そんなウィキペディアですが、ちょっと奇妙なエピソードもあるのです。
今回は、巨大オンライン百科事典にまつわる少し変わった事実をご紹介します。
〈originally posted on July 4,2016〉
1 自分の作品についての記事を訂正できなかった「本人」
著名人についてのウィキペディア内の記事には、不正確な情報が含まれていることがあります。
特に、芸能人に関する記事は、情報ソースとなった週刊誌などの内容が事実無根であることも多いのでなおさらでしょう。
本人が記事の誤りに気づいたら、自分でそれを訂正すればよいだけのようにも思えますが、そう簡単にはいかない場合もあるのです。
数々の賞を受賞しているアメリカ人作家フィリップ・ロスは、映画化もされた小説『ヒューマン・ステイン』に関する記事の中で、主人公のモデルとなった人物についての記述が誤っているのを偶然発見しました。
早速訂正を試みたものの、ウィキペディアの編集者たちから何度も訂正を拒否される結果に。
その理由は、裏付けとなる情報が無い、ということでした。
そこで彼は、この件について、雑誌『ニューヨーカー』に約2700語の説明文を寄稿し、それが出版されたことでようやくウィキペディアの記事が訂正されたのです。
自分の作品についての記述を、その作者本人でも簡単に訂正できない、というのは、何とも奇妙に感じます。
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2 怒涛の編集合戦
フィリップ・ロスのケースは、時には本人ですらウィキペディアの記事を訂正するのが難しいことをよく表していますが、基本的に、ウィキペディアは誰もが自由に記事を編集できます。
そして、記事によってはそれが原因で激しい「編集合戦」が勃発することも。
例えば、2015年において最も編集回数が多かった記事は、米国アラスカ州にあるジュノー氷原についての記事で、実に7920回も編集されています。
そして、ウィキペディアの歴史で恐らく最も頻繁に編集されたページが……。
イラストがあまり似てないですが、ジョージ・W・ブッシュ元大統領について解説したページです。
編集回数はダントツの20894回。
この中には、ひょっとするとブッシュ元大統領本人が訂正したものも含まれているかも知れませんね。
3 「ある事」がきっかけで閲覧数が激減
ウィキペディアには閲覧数が急激に上がるタイミングがいくつかあります。
その一つは、有名人が亡くなったとき。
その人物の足跡を確認したいという人が増えるからでしょう。
逆に、ある事がきっかけとなって閲覧数が激減した例があります。
そのきっかけを作ったのが、エドワード・スノーデン。
ご記憶の方も多いでしょうが、2013年に彼は、アメリカ国家安全保障局(NSA)が電話やインターネットを傍受して個人情報を収集していることを暴露しました。
この事実に不安を感じた人が少なくなかったようで、特にアル・カイダや(イスラム教の)聖戦についての記事の閲覧数が、約3割も落ちたそうです。
4 女性差別と戦う人
ウィキペディアは、その存在自体がやや性差別的であると指摘されることがあります。
その理由は、記事を書いている人や、記事で扱われる人物がかなり男性に偏っているからです。
しかし、その事実を、逆方向に活用している人物がいます。
アメリカのロヨラ大学で生物学を学ぶエミリー・テンプルウッドさんは、男子学生から女性蔑視的なメールが届く度に、あるユニークな手段で反撃しているのです。
それは、女性科学者についての記事をウィキペディアに書くこと。
彼女あてにそういうメールが届くと、ウィキペディア内に女性科学者のページが一つ増えるというわけです。
5 無駄に長過ぎる記事
ウィキペディアに存在する膨大な数の記事の中には、記述量が恐ろしく多いものがあります。
例えば、シェークスピアの史劇である『ヘンリー六世 第三部』についての記事(英語版)は、ワード数が24000を超えています。
ちなみにこれは、『ヘンリー六世 第三部』自体のワード数とほぼ同じ。
この記事を全部読む時間があったら原作を読んだ方がいいような気がしなくもないですね。
でも、シェークスピアの史劇であれば学術的な研究対象にもなりますから、記述が多くなるのはまだ理解できます。
逆に、どうにも理解に苦しむのがこちらの記事。
トイレットペーパーをホルダーに取り付けるとき、表向き(紙を手前に垂らす)にするか、裏向き(紙を向こう側に垂らす)にするかについて徹底的に比較して考察を加えた内容になっています。
記述量は、先のヘンリー六世には遠く及びませんが、それでもかなりの量です。
心理学まで持ち出して、トイレットペーパーの向きの選び方をもとに人間の性格や行動にまで言及しているのは驚き。
ところで、この記事はおそらく同じタイトルの英語版の記事を翻訳し、それに加筆したものと思われます。
というのも、日本ではトイレットペーパーは「表向き」なのが常識ですから、そもそもこんなことを真面目に議論しようとする学者など皆無だと思われるからです。
「裏向き」のトイレットペーパーなんて使いにくくて仕方ないですから…。
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