もはやほとんど誰も使わなくなったものの、完全に無くすわけにはいかない物の一つに、電話ボックスがあります。
スマホが普及した今、日本国内の公衆電話の数は、1993年のピーク時の6分の1程度まで減りました。
日常的に使用されることはあまり無いのですが、しかし災害時などには重要な連絡手段になりうるため、公衆電話は決して無用になったわけではありません。
公衆電話が無くなりつつあるのは、真っ赤な電話ボックスで有名なイギリスでも同じです。
2017年の時点で、イギリス国内には約4万台の電話ボックスが設置されていましたが、向こう5年間でそれをさらに半減させるという計画が発表されました。
その理由は、利用者が少ない割に維持費が高いため。
あの印象的な赤い電話ボックスが消えつつあるのは寂しい話ですが、その一方で、イギリスには日本ではまずお目にかかれない珍しい電話ボックスも存在しています。
今回は、そんなちょっと普通ではない電話ボックスの数々をご紹介します。
〈originally posted on March 21,2019〉
1 世界一小さい図書館
ロンドンのルイシャム区には、世界一小さい図書館があります。
その名も、「ルイシャム・マイクロ・ライブラリー」。
なぜ世界一小さいのかと言えば、電話ボックスを図書館として再利用しているから。
使われなくなった電話ボックスの内部に棚が設置されてあり、狭い内部に本がぎっしり。
超小規模ながら、フィクションからノンフィクションまで、様々なジャンルの本が揃っています。
図書館は24時間開いており、会員制度も無く、誰でも自由に利用可能。
唯一のルールは、「一冊本を借りたら、自ら持参した本を一冊置いて帰る」ということ。
もともとこの電話ボックスは廃棄処分にされるところだったのですが、2014年にセバスチャン・ハンドリーという地元の男性がたったの1ポンドで購入し、「図書館」に改装したのです。
問題は、皆がマナーを守って利用してくれるかということ。
これに関しては、やはり時々は、心無い人が内部を荒らしたりするのだとか。
しかし、そういう時は他の人々が協力して修復してくれるので、図書館としての機能は維持できているそうです。
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2 誰も入れない電話ボックス
一見すると、木が生い茂っている場所に設置された、ごく普通の電話ボックス。
2016年、イギリスのウェールズ北西部グウィネズで、ヒュー・ウィリアムスという男性が、アンティークショップから出てきて、ふと前方の電話ボックスに目をやると、何とも言えない違和感を覚えました。
そばに近寄ってよく見てみると、密集した木の枝や葉は、電話ボックスの背後にだけあったのではなく、その内部をも埋め尽くしていたのです。
おそらく、ドアのすき間から枝が侵入し、成長を続けたのでしょう。
まさに、植物に支配された電話ボックス。
公衆電話の利用者が減ってきているとはいえ、さすがにこの状態では誰も使えません。
3 世界一小さい喫茶店
図書館の次は喫茶店です。
イギリスのノッティンガムシャーには、世界一小さい喫茶店があります。
もちろん、お店があるのは電話ボックスの中。
ルーク・ソープという男性が始めた「ダイアリング・イン」というその店には、コーヒーメーカーと小さな冷蔵庫、その他食器類があるだけ。
にも関わらず、彼はエスプレッソから紅茶、ホットチョコレートまで一通りの注文に答えられます。
昔からコーヒーショップをやってみたかったというソープは、電話ボックスがレンタルできる点に目を付け、このビジネスを始めたのだとか。
確かに、電話ボックスの賃料を考えれば、一軒の店を構えるよりは遥かに安上がりです。
お店の周りにはテーブルは無く、あるのは椅子(スツール)のみ。
突然雨が降ってきた場合などは、客はそばにある別の電話ボックスに駆け込んでコーヒーを飲むこともあるとか。
かなり風変わりなコーヒーショップですが、平日は午前7時半、土曜日は午前8時半から営業しており、客の評判は上々なのだそうです。
4 行列のできる電話ボックス
イギリスの北ウェールズのレクサムには、時に行列ができるほどの人気を誇る電話ボックスがあります。
といっても、この地域の住民がスマホと無縁の生活をしているわけではありません。
その電話ボックスは、ドラッグ密売人との連絡を取るために使われているのです。
自分のスマホを使わないのは、通信履歴によって足が付くことが無いから。
ドラッグを買おうとする人々は、車やバイクでやって来ては、電話ボックスで密売人に連絡。
このような光景が、日常的に当たり前となっています。
付近に住む住民は、治安に対する懸念から、その電話ボックスを撤去すべきだと考えていますが、管理をしているブリティッシュ・テレコム社は、撤去するつもりは無いとのこと。
その理由は、犯罪とは関係なく利用している人たちもいるから。
というのは恐らく建前で、この電話ボックスからの収益が相当に高いというのも大きな理由でしょう。
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5 フルタイムで働いて電話ボックスに住む女性
イングランドのレスターシャーに住む61歳のある女性は、電話ボックスで寝泊まりしています。
そういう意味では彼女はホームレスなのですが、しかし平日は工場でフルタイムの仕事をし、夜勤をこなすこともあるのです。
そこまで働いていながら電話ボックスで生活せねばならない理由は、家賃が払えないから。
もともと彼女は別の街に住んでいて、60歳のときに定年退職しました。
年金だけでは生活できず、彼女は職を探しますが、その年齢のせいでなかなか仕事にありつけず。
レスターシャーでようやく工場での職を見つけたものの、家賃を払う余裕が無く、電話ボックスで生活するようになりました。
彼女のように電話ボックスで暮らす人の例は他にもあります。
バーミンガムでは、スティーブン・ポープという43歳の男性が、スーパーマーケットの正面にある電話ボックスを住み処にしていました。
以前は解体作業員として働き、実家で暮らしていた彼は、両親が亡くなると同時に住む家を失い、仕事も失ったそうです。
ホームレスにならざるをえなかった具体的事情が何なのかは分かりませんが、それ以来彼は電話ボックスに毛布などを持ちこんで、そこを寝床にしました。
電話ボックスでの生活は、雨風はしのげるものの、冬場の寒さはかなり厳しく、二度と朝が来ないと感じることもよくあるとか。
彼の姿を見かけた人の中には、温かい食べ物などを差し出す人も多いそうです。