「不要不急の外出は控えて」
この言葉は、昨年から誰もが何度も耳にしています。
東京で、3000人に迫る新型コロナウイルス感染者が出た日、菅首相は、記者団の前で、改めてこの言葉を用いて国民に理解を求めました。
外出を控えるだけで、感染者数が激減することは恐らく無いでしょうが、しかし、外出を控える以外に、有効な対策が無いのも事実。
なるべく外に出ない、というのは、それほど難しいことではありません。
ただ、そういう生活が定着すると、運動不足になるのは避けられないでしょう。
体重が増えてしまう可能性もあります。
しかし、体重だけの問題なら、まだマシなのです。
〈originally posted on July 28, 2021〉
1 運動不足と新型コロナウイルス
今年の4月に、イギリスの学術誌に発表された論文によると、運動不足と新型コロナとの間には、無視できない関連性があります。
昨年の1月から10月にかけ、新型コロナに感染した約5万人の成人を対象にして、過去2年間の運動習慣と感染リスクとの相関性が調べられました。
その結果、一週間のエクササイズ時間が10分未満(つまり運動不足)の人は、十分なエクササイズをしている人に比べ、新型コロナで入院する割合が、2.26倍高いことが分かったのです。
さらに、運動不足の人は、感染してからも、症状が深刻化する確率が上がります。
新型コロナによって死亡する人の割合は、運動不足の人の方が、よく運動する人よりも、2.49倍高いという結果が出たのです。
専門家の見解では、一週間に、軽い運動(ウォーキングやサイクリングなど)であれば150分程度、ランニングであれば75分程度のエクササイズをするのが理想的であるとのこと。
新型コロナに感染しないように外出を控えると、運動不足を招き、それがかえって感染リスクを上げかねない、という矛盾。
東京オリンピックの開催も、矛盾だらけと言われてきましたが、コロナ対策も、矛盾に満ちています。
2 スポーツをやらない人は、人生を損している(かも)
日常的にスポーツをしている人は、体型を維持していて、健康でいられる。
そういうイメージを抱いている人は多いでしょうが、スポーツのメリットは、肉体面だけにとどまりません。
最近、アメリカの企業が行ったリサーチによれば、スポーツをする人は、そうでない人よりも、「充実した人生」を送っている確率が高いことが分かりました。
普段から、サッカーやバドミントン、バスケットボールなどのスポーツを嗜む人は、全くスポーツをやらない人に比べ、友人が多く、社交的で、人生に充足感を抱いているのだとか。
このリサーチは、スポーツする派、しない派、それぞれ1000人を対象にして行われたのですが、両者の違いはまだあります。
例えば、独身者の割合。
スポーツする派の独身率は13%だったのに対し、スポーツしない派は20%。
また、仕事とプライベートの比率に満足している人は、スポーツする派で66%だったのに対し、スポーツしない派は42%。
さらに、スポーツする派の人たちは、自分に自信を持ち、人生をポジティブに捉える割合も高いのだそうです。
「自信」という点で言えば、特に、サッカー女子には大きなメリットがあります。
イギリスやデンマーク、ドイツ、スペインなどに住む、14歳以上のサッカー女子約4千人を対象に調査したところ、サッカーをしている女性は、それ以外のスポーツをしている女性に比べ、いくつかのメリットのあることが分かりました。
具体的には、以下のような効果を感じる人の割合が、他のスポーツに比べて多いのです。
- 周りが自分をどう思っているかをあまり気にしなくなった。
- 競技に専念することで、自信の無さを克服できた。
- 自己中心的な性格が改善された。
- 恐怖や不安に対処するのが上手くなった。
なお、この調査結果では、何故サッカーだけが、女性にとって特別な効果をもたらすのかについて、詳細な言及はありません。
また、日本とヨーロッパとでは、上記の「サッカー効果」の度合いも異なってくる可能性があります。
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3 全く運動しない人は、脳をフル活用できない
2020年に、スウェーデンのヨンショーピング大学が発表した研究結果によれば、毎日、適度な運動をすることで、脳のパフォーマンスが上がるのだとか。
具体的には、ウォーキングやランニング、サイクリングといった運動を、一日にたった2分間行うだけで、注意力、集中力、学習能力、記憶力などに良い影響があるそうです。
研究者らの話では、運動によってこれらの能力が上がる原因について、まだ正確なことは分かっていません。
しかし、原因はどうあれ、一日たった2分間のエクササイズで、脳力をアップさせられるのですから、やらない手は無いでしょう。
どれだけ運動嫌いの人でも、2分間くらいのエクササイズには、さすがに耐えられるハズ……。