歴史に名を残すような人物
というのは、大雑把に言えば、人々の役に立つ偉業を成し遂げたか、人々を殺戮したかのどちらかです。
後者が人間的に酷いのは明らかですが、だからといって、社会に貢献した人が、酷い人間でないとは限りません。
場合によっては、その人物が達成した功績により、邪悪な部分が見えにくくなっていることもありますから。
今回は、人間的に問題のある偉人たちをご紹介します。
〈originally posted on September 20,2018〉
1 女性はクリエイターにはなれないと信じるウォルト・ディズニー
子供に夢を与えるキャラクターを生み出した人にも、やはりダークな面はあります。
その好例が、ウォルト・ディズニーです。
アメリカ人ジャーナリストのニール・ゲイブラーは、その自叙伝の中で、ディズニーの持つ意外な顔について触れています。
それによると、ディズニーは少なからず人種差別主義的な面を持っていました。
例えば、会議の場などでは、黒人の子供に言及する際、極めて侮蔑的な差別語を使うことがよくあったのです。
人種差別も問題ですが、それに加え、彼は女性蔑視をすることでも知られていました。
ディズニーの下でアニメーターとして働いていたウォード・キンボールの話によると、ディズニーは女性を信頼することが全く無かったとか。
あるとき、ディズニー・プロダクションのアニメーター養成プログラムに応募してきた一人の女性に対し、ディズニーは次のような文面の手紙を送りました。
女性はクリエイティブな仕事は何一つ出来ない。
そういう仕事がこなせるのは、若い男だけだ。
よって、養成プログラムに女性が参加することは想定されていない。
2 ライバルを歴史から消そうとしたアイザック・ニュートン
ニュートンと言えば、木からリンゴが落ちるのを見て万有引力の法則を発見したという逸話で有名です。
そして、この逸話が実は作り話であるということもよく知られています。
ただ、この話が生まれるきっかけを作ったのは、ニュートン本人かもしれません。
あるとき彼は、知人との会話の最中、自分の非凡さを誇示するかのごとく、リンゴのたとえ話で引力の説明をしたとされています。
いずれにせよ、万有引力の法則を発見したのはニュートンなのだから、逸話が真実かどうかなどは些末な問題。
……とは言い切れないのです。
実は、ニュートンよりも先に、惑星間には互いに引き合う力が働いていることを発見していた科学者がいます。
それが、ロバート・フック。
「フックの法則」でお馴染みの人です。
「ああ、バネのやつね」と思われた方も多いでしょう。
しかし、ロバート・フックは、これ以外にも、物理学者としてニュートンに勝るとも劣らぬ数々の功績を残しています。
にも関わらず、一般的には単に「バネの人」として認識されているのは何故か。
その原因を作ったのが、まさにニュートンなのです。
二人は完全なライバルどうしでした。
軋轢が生まれたきっかけは、光という現象の正体について、フックはそれを一種の波であると唱え、ニュートンは粒子であると主張したこと。
この対立は、後にフックの考えの方が正しいことが証明され、彼の理論は素粒子物理学や量子論の基礎となりました。
さらに、ニュートンが重力論についての論文を発表したとき、先にその研究に取り組んでいたのは自分であるとフックは主張しましたが、ニュートンはそれを黙殺。
後にフックが亡くなってから、彼の評判を落とすためにニュートンはあらゆる手段を尽くしました。
現在の二人の知名度の差を考えると、ロバート・フックの名前を歴史の中に埋もれさせようという彼の目論見は、ほぼ成功したと言えるかもしれません。
3 貧困の苦しみを美化するマザー・テレサ
は、インドにおいて、貧しい人々のための施設を設立し、彼らの生活のケアに生涯を捧げた人です。
1979年にはノーベル平和賞を受賞し、チャリティ精神のシンボルのような存在となっています。
そんな聖人でさえ、そのイメージをぶち壊す側面を持っています。
施設内では病気を抱えた人が少なくなかったのですが、彼らの扱われ方には色々と問題がありました。
実際にそこで活動していたボランティアの話によると、専門知識に乏しいスタッフがいたり、注射器を使いまわしたり、使用期限の切れた薬を使ったりといったことがあったとか。
また、マラリアに感染した患者に市販の解熱鎮痛剤を与えるという、不適切な治療が行われていたことも。
さらに、施設にいる人々と、その近親者とが面会するのを禁じていたとも言われています。
施設内の環境が悪かったのは、資金不足のせいではありません。
何故なら、マザー・テレサの元に世界中から寄せられた寄付金は、相当な額に上っていたからです。
となると、施設で暮らす人々に、本当の意味で適切な処遇がなされなかったのは、それがマザー・テレサ自身の意図するところだったということ。
その証拠に、彼女は、貧困に苦しんでいる人々のことを「美しい」と表現したことがあり、こうした発言から、専門家の中には、マザー・テレサは人々を苦しみから救おうとしていたのではなく、その苦しみ自体を美化したかったのではないかと言う人もいます。
4 ユリシーズ・グラントが提唱した「黒人大移動」
アメリカ合衆国第18代大統領であるユリシーズ・グラントは、南北戦争期には将軍として北軍を勝利に導いたことで有名です。
大統領の職務に就いてからは、数多くのスキャンダルに見舞われたものの、奴隷状態から開放された黒人たちの市民権保護にも尽力しました。
しかしながら、彼は黒人の人権に配慮する一方で、黒人と白人がともに平和的に暮らせる社会を思い描いてはいなかったようです。
それを裏付けるのが、グラントが発案した、アメリカがドミニカ共和国を併合するという計画。
この計画の実現のため、グラントは、約1500万ドルをドミニカ共和国側に提供する考えでした。
彼がそこまで同国の併合にこだわった理由は、開放された400万人の黒人をアメリカから移住させるため。
黒人をアメリカから追い出す、という捉え方もできるでしょう。
当時は、白人至上主義団体のクー・クラックス・クラン(KKK)の活動が活発化していましたから、グラントとしては、黒人と白人の共生はほぼ不可能であると踏んでいたのかもしれません。
そんなグラントには、プライベートの面で、やや変わったこだわりがありました。
それは、自分の裸を決して他人には見せなかったということ。
幼少期から誰にも裸を見せたことが無いという事実を、彼は自慢話として語っていたとか。
グラントは、南北戦争中も、看護師にさえ一切裸を見せなかったそうです。
5 電話の特許を取った男を悩ませる「ろう者」の存在
アレクサンダー・グラハム・ベルは、「ベル」という名前から電話を連想しやすいので、電話の発明者と言われることが多いですが、実際に発明したのはアントニオ・メウッチという人物。
ベルは、メウッチの発明を(多分)パクって、電話の特許を取ったのです。
他人の発明を堂々とパクっていたのが真実ならとんでもない奴ですが、仮にパクっていなかったとしても、やはりとんでもない奴です。
その理由は、ろう者に対するベルの考え方に、かなり問題があったから。
これは、彼が電話の特許を取ったこととは直接の関係はありません。
彼は、ろう者に関してやや病的な捉え方をしており、ろう者の増加が原因でアメリカが破滅する、といった恐怖心すら抱いていたのです。
その結果、彼は多くの州議会議員と個人的に面会し、いくつかの要望を伝えました。
その中に含まれていたのは、学校で手話を教えることの禁止、ろう学校の廃止、養護教諭がろう者を指導することの禁止など。
これらを実現することにより、手話を使わず、口の動きを読み取ることで意思疎通を図る口話主義を、ろう者に徹底させようとしたのです。
こういったベルの考えの根底にあったのは、劣悪な遺伝子を排除しようという「優生学」。
それゆえ彼は、ろう者どうしの結婚にも反対でした。
さらに、ろう者を含む障害者全般に関して、
と、はっきり語っています。