日本が海外からのサイバー攻撃に遭うことは、今では珍しくなくなりました。
大手企業のネットワークがハッカーに侵入され、法外な金を要求されたこともあります。
ネット無しでは生活できない現代において、極めて厄介な存在であるハッカー。
今回は、そんなハッカーの中でも伝説級の人たちをご紹介します。
〈originally posted on January 16, 2022〉
1 激ムズSTGでユーザーを苦しめるハッカー
ランサムウェアという言葉を聞いたことのある人は多いと思います。
このプログラムは、他人のコンピュータに侵入し、中のデータを暗号化することでアクセス不能にします。
そして、暗号を解読するためのソフトを高額で買わせるのです。
自分の大切なデータを取り戻すために、渋々お金を払った人も大勢いることでしょう。
許しがたい行為ですが、しかし、お金で解決するのなら、まだマシかもしれません。
ランサムウェアの突然変異種として現れたものに、「レンセンウェア」というものがあります。
不特定多数のコンピュータに侵入し、中のデータを暗号化するところまではランサムウェアと同じ。
ただ、レンセンウェアは金銭を要求しません。
代わりに、ハイスコアを要求するのです。
2009年に発売された「東方星蓮船~ Undefined Fantastic Object.」という高難度シューティングで、
200,000,000,000点
というとんでもないスコアを叩き出すことで、暗号が解除されます。
「東方」シリーズと言えば、画面中を覆い尽くす弾幕をかい潜って敵を倒していくシューティング。
ただでさえ難しいこのゲームで、超ハイスコアを達成せねばならないのは、金を要求されるよりも洒落にならない悪夢でしょう。
ちなみに、「レンセンウェア」の名は、このゲームのタイトルから取ったもの。
このプログラムは、コンピュータ内にインストールされた「東方星蓮船」のスコアを読み取り、それによって暗号を解除するようになっていました。
2 北朝鮮のネットを止めたハッカー
恐らく、今から50年経とうと100年経とうと、日本に向けてひたすらミサイルを発射し続けるであろう国。
もちろん、北朝鮮のことです。
2021年、その北朝鮮が、怒らせてはいけない人物を怒らせてしまいました。
その人物とは、アメリカ政府のためにセキュリティの研究をしている男性で、「P4x」というコード名で呼ばれています。
あるとき北朝鮮は、「P4x」のコンピュータに、様々なマルウェアを送り込んできました。
これにカチンときた彼は、北朝鮮にお灸をすえることを決意。
そして、北朝鮮のインターネットに、約2週間、障害を発生させたのです。
少なくとも数日間は、同国内でネットが全く繋がらない状態だったとか。
これは、「P4x」が北朝鮮のシステムをハッキングして引き起こしたもの。
しかも、彼はこれを自宅で映画を観たりスナックを食べたりしながら、いとも簡単に成し遂げたのです。
何をどうやったら一国のインターネットを丸ごと機能不全に陥らせることが出来るのか、素人の僕には想像もつきません。
ただ、一つだけ確かなのは、北朝鮮は、明らかに怒らせてはいけない人を怒らせてしまったということでしょう。
3 『ハーフライフ2』を盗んだ少年ハッカー
『ハーフライフ2』というのは、Steamで有名な米国Valve社による人気FPSの二作目。
2003年、このゲームの完成が目前という時になって、ゲームのソースコードが丸ごと盗まれました。
盗んだのは、ドイツ在住のアレックスという少年。
彼は、自分がマルウェアの被害に遭った経験から、ハッキングについて徹底的に勉強し、遂には独学でハッキングの技術を身につけたのです。
自らも『ハーフライフ』の大ファンだった彼は、この技術を駆使してValve社のサーバーに入り込み、開発中の『ハーフライフ2』のソースコードを入手。
その後、それを第三者に手渡してしまったことから、ソースコードがネット上に漏洩したのです。
これにより、『ハーフライフ2』は発売延期を余儀なくされ、Valve社には多額の損害が発生。
ここからのアレックスの行動は、普通の人にはちょっと予想できないでしょう。
彼は、Valve社にメールを送り、自分が犯人であると告白しました。
その理由は二つ。
一つは良心の呵責から。
もう一つは、彼自身がValveに入社して、ゲーム開発に携わりたかったから。
ゲーム開発者になるのは、アレックスの夢でした。
そこで、ソースコードを入手した方法を包み隠さず暴露するのと引き換えに、自分のプログラマーとしての能力を売り込んだのです。
Valve側は、面接をしてほしいという彼の申出を受け入れました。
後日、電話でアレックスのインタビューが行われ、彼は自分の夢に一歩近づいたことに歓喜したのです。
しかし、自社に大損害を与えた張本人をアッサリ採用するほどValveもお人好しではありません。
Valveは、初めからアレックスの犯行証言を得る目的でインタビューを行ったのです。
2004年5月7日、アレックスが自宅で目覚めると、複数の警察官が彼の顔を狙って銃を構えていました。
こうして、彼は逮捕されたのです。
それにしても、会社からゲームを盗んでおきながら、その会社に入社できると思っていたのは、いかにも少年らしいという気がします。
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4 国中のインターネットを切断した「ハッカー」
先程、北朝鮮のインターネットが使用不能にされた事例をご紹介しました。
もちろん、そんな芸当が可能だったのは、高度な技術力があったからこそ。
しかし、ごく普通のお婆ちゃんが、全く同じ結果を招いたことがあります。
今から10年以上前のアルメニア共和国で、国全体のインターネットが遮断されたことがあるのです。
外国からのサイバー攻撃かと思いきや、犯人は、年金暮らしをする75歳のお婆ちゃん。
アルメニアの隣国であるジョージアに住む彼女は、銅を掘り当てて換金するために、日頃からシャベル(鋤)を使って土を掘っていたのです。
運の悪いことに、アルメニア国内のインターネットの生命線とも言うべき重要なケーブルを、そのシャベルが直撃。
ケーブルが切断されたことで、インターネットが消失したというわけ。
後に彼女は、「スペード(鋤)ハッカー」と呼ばれることになりました。
このお婆ちゃんがやらかしたことは、れっきとした犯罪。
どのような刑罰を受けたのかは定かではありませんが、年齢を考慮して、実刑は免れたのではないかと言われています。