珍しい病気
を患うと、それによる命の危険が無くても、毎日の生活そのものが激変することがあります。
その病気が治療できれば、元の生活に戻れますが、奇病であるがゆえに、治療法が確立されていない可能性もあるでしょう。
病気の存在自体があまり知られておらず、医師に相談しても、まともに相手にしてもらえないかも知れません。
今回は、そんな病気とともに生きる人たちの生活をご紹介します。
〈originally posted on December 27,2019〉
1 男性の声だけ聞こえない生活
2019年1月、中国南部の厦門市で、「チェン」という名前だけ公開されている、ある女性が、耳鳴りが止まらないのに苦しめられ、とりあえず寝れば治るだろうと考えてベッドに入りました。
ところが、翌朝に目を覚ますと、彼女は自分が予想外の状況に置かれていることに気づきます。
そばにいる彼氏が何かを話しているのですが、それが全く聞こえないのです。
普通の人であれば、この瞬間、自分は聴力を失ったと思うかも知れません。
不安になったチェンは、早速病院を訪れました。
人の話し声が聞こえない状態で、医師とどうコミュニケーションを取ろうかと心配していた彼女でしたが、どういうわけか、目の前の女医の話は問題なく聞き取れるのです。
しかし、近くを通る男性患者の話し声は全く聞こえません。
つまり、彼女は、男性の声だけ聞こえなくなったのです。
担当した医師によれば、チェンは、過労による心身の疲れ、及びストレスが原因で、低い周波数の音だけ聞こえなくなっていました。
逆に、高い周波数の音、例えば女性の声は、正常に聞き取れます。
完全に聴力を失ったわけではないという点は、幸運だったと捉えることも出来ますが、この珍しい症状をいちいち周りに説明するのは、かなりの苦労を伴うでしょう。
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2 十数年もガラス張りの家から出られない生活
スペインのカディス市在住のフアナ・ムニョスという54歳の女性は、化学物質過敏症、線維筋痛、慢性疲労症候群、電波過敏症の4つの症状を抱えています。
若かりし日、彼女は、夫が栽培したジャガイモの土を払っているときに、目が痒くなり、思わず手で目を擦ったのですが、そのとき、彼女の手には発芽防止剤が付いていたのです。
この直後から、目と舌が腫れ上がり、症状はどんどん悪化。
数日後、フアナは集中治療室で目覚めることとなったのですが、命は助かりました。
ただし、珍しい症状を4つも抱えることになった彼女は、ガラス張りの家での生活を余儀なくされることに。
基本的に、その家からは一歩も外へ出られません。
夫の全面的なサポートがあるので、毎日の生活に大きな支障は無いものの、やはり、それで問題解決というわけにはいきませんでした。
フアナ本人の話では、今の生活で最も辛いのは、病気による痛みではなく、行動範囲を制限されることからくる精神的な負担なのだとか。
2018年にメディアの取材を受けた時点で、すでに13年間も、子供や夫をハグすることすら無く過ごしてきた彼女は、もうすぐ誕生する孫を両手に抱くのが夢だと語りました。
3 一日に100回も嘔吐を繰り返す生活
イングランドのダラム市に住むルーシー・メイヴェン(30)は、「周期性嘔吐症候群」という大変珍しい病を患っています。
あまりにも稀な病気なので、世界中でどれくらいの患者がいるのかは把握されておらず、医師の間でさえ知らない人もいるとか。
その名が示す通り、この病気にかかると、突発的に嘔吐を繰り返すようになります。
ルーシーの場合、何の前触れも無く嘔吐が始まり、その回数は多い時で日に100回くらい。
そういう日が一週間以上続くこともあり、そのときは病院で点滴を受けることになります。
根本的な治療法が無い上に、嘔吐が始まる原因もよく分かっていません。
調子が良ければ、数ヶ月間、嘔吐と無縁でいられますが、一旦嘔吐が始まると、自分ではコントロール出来ないのです。
彼女の話では、ストレスや興奮などが嘔吐のきっかけになる可能性が高いのだとか。
例えば、好きなアーティストのコンサートに行く予定の日に限って、朝から嘔吐が止まらなくなり、結局家から出られなくなったことがあるそうです。
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4 一日21時間の睡眠が必要な生活
以前、「最も奇妙な睡眠障害6選」という記事でもご紹介した、クライネ-レヴィン症候群は、世界中でも1000人ほどの症例しか無いとされる、珍しい病気です。
この病気になると、毎日の睡眠時間が異常に長くなることから、「眠れる森の美女」症候群と呼ばれることもあります。
この症状を持つ人の中でも、特に過酷な人生を強いられているのが、サウス・ウェールズ出身のヘレン・ウォーターソンという女性。
彼女は、幼い頃から、気怠さが全身にこびりついているような日々を過ごしていました。
子供時代、家族でレストランへ食事に出かけたときに、ヘレンはメニューに魚料理があるのを見て、どんな魚があるのかを聞こうとしたものの、その質問が出て来ず、気づいたら「魚って何?」と口走っていたとか。
10代の頃は、家にいるとき、食事やトイレを除けば、大抵寝ていたそうです。
それでも彼女は何とか大学を卒業し、就職もしました。
しかし、2009年、インフルエンザにかかったときに、何日間も眠ったままの状態が続いたことから、病院で診察を受けます。
最初は、うつ病だと診断されましたが、翌年、クライネ-レヴィン症候群であることが分かったのです。
彼女の症状は悪化の一途をたどり、遂に、一日に21時間を睡眠に費やすようになりました。
目覚めても、体中の筋肉が硬くなっているので、すぐに行動を起こすことが出来ず、家事なども自分ではままならないことがほとんど。
家から出ることも滅多にありません。
薬の力に頼らないと、一日のうちの貴重な数時間を起きて過ごすことさえ難しく、さらに、その薬には副作用があります。
一日に数時間しか活動できないということは、普通の人に比べ、人生の多くを失わざるを得ないということ。
「物語の中の美女とは違って、私にはハッピーエンドは無いわ」
ヘレンはそう語っています。